ディキンスン詩集 海外詩文庫2 エミリー・ディキンスン 編:新倉俊一 思潮社

1993年 四六判 ソフトカバー P160 ビニールカバー・帯付 本体背一部剥がれ 小口僅汚れ ページ下角薄く折れ跡

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1993年 四六判 ソフトカバー P160 ビニールカバー・帯付 本体背一部剥がれ 小口僅汚れ ページ下角薄く折れ跡

“絶望と至高の苦悩の裡に、人生への醒めたまなざしを秘めたディキンスン。生前一冊の詩集も出さずに死んだ彼女の詩篇が、20世紀に復活した魅力を、この一冊に凝集。”(帯文)

目次:
【訳詩】
日夏耿之介訳
 {心まづ快樂を覚む/生/生 二十一/時間と永劫と 七四}

安藤一郎訳
 {わたしは人が醸したのではない美酒を味わう/傷ついた鹿は―最も高く跳ぶ/わたしは苦悩の表情が好きです/わたしは頭の中に、葬式があるのを感じていた/一羽の小鳥が庭の路をやってきた―/ひどい狂気は識別する眼にとって/月は海から遠く離れている―/私は「美」のために死んだ―だが墓の中に/わたしは憎む暇がなかった―/あのひとはわたしに触れた/二羽の蝶が真昼飛び立ち/わたしたちは「愛」の全部を学んだ―/その―名は―「秋」―/一時間待つことは―長い/詩人はランプに火を点じるだけ/草の中の細長いやつは/わたしは荒地を見たことがありません―/百年を経たあとは/稲妻は黄いろのフォーク/「脱出」というのは大変有難い言葉!/道は月と星で明るかった―/悲しみのようにひそやかに/わたしの火山の上に草が生える/彼女が生きた最後の夜/その湿地は秘密があるために愉しい/わたしの生涯はその終りまで二度終った}

新倉俊一訳・I
 {これは一度も手紙をくれたことのない/成功はすばらしく思われる/うわべだけ頭をたれて/一瞬の喜びを/声高く戦うのは勇ましい/詩人たちの歌う秋の他にも/冬の午後には/もし駒鳥たちがやってくるころ/ランプは休みなくみずから燃える/アラバスターの部屋で安らかに/こまどりが私の歌の基準です/ブロンズ色に輝いて/宝石を手にして/あらしの夜よ/希望は心のなかにとまる/英語にはたくさんのことばが/太陽のかたちは/もしおまえの神経が/独りで私はいられない/わたしは思う この世ははかなく/魂は自分の社会を選び/魂のすばらしい瞬間は/夏の盛りにその日がやってきた/あるひとたちは安息日を/眼が見えなくなるまえに/わたしはあのひとが/白熱した魂をみたいですか/ひどい苦しみのあとに/わたしは天国にでかけた/風景の一角は/なんと柔らかい天使のようなひとたち/わたしは自分の宣告文を/よくみえないときに/このひとは詩人だった/この世界は決して終りではない/それは死ではない/周辺―この畏敬の花嫁よ/廃虚をみつめる眼のように/わたしが死ぬとき一匹のはえが/私は家で一番目立たないもの/あなたが秋にいらっしゃるなら/白い選択の権利によって/今迄に見たなによりも/心はまず楽しみをもとめる/それがいく哩も舐めるのを/わたしの手紙の読み方はこうです/苦痛は空白の要素をもっている/私は可能性に住んでいる/出版は人間のこころの競売/わたしが死のためにとまることが/予感は陽の沈むのを/自身の名声を証しできれば/後悔は目の冴えた記憶/すべてを失って 海のむこうに/柱のような自己自身には/わたしは不安で生きてきた/この床を充分にのべなさい/私はいつもなにかを失った気持がした/すべてを失ったことが/夏に鳥たちよりもおそく/わたしの繭はひきしまり/死んだ朝の家のざわめきは/こおろぎが鳴いて/おまえを採用しようか/まわる車輪をもった/極楽はすぐ隣の部屋ほど近い}

新倉俊一訳・II
 {心よ、互いにあのひとを忘れよう!/わたしは二度しか失ってはいない/自分の問題の上に身を屈めていると/いまごろは鳥たちが戻ってくる思ってる/ちょうど失われたら救われた!/肖像といつもの顔のちがいは/泣くのはとてもたあいないこと/わたしは「主婦」―いまはもう終えたの/自然は他の色よりも/アラバスターの部屋で安らかに/時計がとまった/夏の日をくり返すことができる者は/鉛色のふるいから落ちて/日がどのように昇ったか話しましょう/いちばん身近な夢は果されずに遠のく/真珠を使えるまでは/そとに発信される音のうちで/土のなかの訪問者は/わたしはあのひとと共に住み あのひとの声を聞く/わたしは大工として育ちました/私の庭先を一羽の鳥が/コウライウグイスの歌声を聞くのは/わたしがいつも愛してきたことを/きっと悲しみや/ながい別離だったが―ついに/ある夏わたしたちは結婚して/鐘が鳴りやむとき 礼拝が始まる/いちばん長く感じられるときは/お互いの当惑と/すべての造られた魂のなかから/「自然」とは目に見えるもの/幽霊に憑かれるには 部屋でなくてもよい/未来は今までいちども語ったことがない/大切な油は絞り取るもの/ひとの成長は 自然の成長のように/わたしの生涯は ずっと装填された銃だった/苦難のまっすぐな道を通って/この静かな塵は かつて紳士と淑女たちだった/隣りのひとたちや太陽を/風が草むらをこね始めた/自然と神と そのどちらも私は知らなかった/死が―せまい愛となるまで/墓のなかにずっとながくいた者も/棺はせまい領地です/美の定義は/死ぬにはほとんどなにもいらないのね/革命はさやで/神聖な資格はわたしのもの/三時半に一羽の小鳥が/おお 豪華な一瞬よ/死の白い霜が窓ガラスに降りて/このせまい場所をそっと歩いて下さい/「終りまで忠実に」という言葉は/見せ物は見せ物のほうではなしに/春のささやかな狂気は/夏が秋に滑り込む/すべてを奪い去れ/この桂冠をあのひとに与えて下さい/一滴の露で十分だった/「天の父」よどうかご自身に/ただの推測としてしか/美から離れていることはだれにもできない/駒鳥は貧しい境遇にある/救い主ってとても/小石はなんてしあわせだろう/心にはたくさんのドアがある/それが来るまえにわたしたちは避ける/あのひとがくれた不滅を/美よ 死にいたるまでわたしを囲んでください}

岡隆夫訳
 {夜明けには わたし人妻なの/彼女が見たことのない高台を見せ/四方にとび散る火打石の火花のように/お墓なの わたしの小さな家/もし鉛筆 お持ちでないなら/なんと疎しいこと!/恥ずかしくないわ/魂よ ゆっくり お行き/再び 玄関にあの人の声―/彼女は地中に住んでいる/死ぬほど知りたいの/一変なさい! 丘陵が変るとき―/この世で彼に会えないなんて/お墓であればこそ/闇の方が ずっとよく見えるわ/あのはじめての日―/見えないものこそ一等よく見えます/その方はわたしの主人でした/永年あなたを愛するってこと/お互い語りあいました/心に亀裂がはいり/日の出ですよ お嬢さん/死を遂げた人々の/その子は あたかも 遊んでいて/陽はなおも沈みつづけた―/あの人の〈命だった物〉を―/お墓のなかにいるの!/不在証明を持たないためにも/きょう それも正午まで/幸い 嵐は去り/森林がなだれ/どんなに水が頭上を閉ざしたか/臨終の部屋で/もっとお気を確かにね/この従順なる人はお墓に這入る/どちらが一等淋しがるでしょう/それは買えません 売られて/生の気怠るさ―/〈おねがいです〉と命のかぎり/さあ 横にしてあげますよ/その顔は 髪に埋もれていました/久しくとりなしてきた唇も/その表情をじっと見つめていました/勝利はおくれてやってくる―/死は 樹木を 脅し/その胸に魅せられた矢は/彼女はこの世に帰ってきた/肌の色 身分 宗派/生きる定めだったことも/死の一撃は生の一撃/〈時〉の窃盗行為のうち/月々に終りがあり 年々に結びがある/ウルフ将軍は死に臨んで質した/つちくれこの土塊と その特質は/溺れかかって 浮上しようと/亡びる権利は/若死する者が 早死とはいえない/やさしいお墓から連れもどして/お墓にいる人たち―/溝こそ貴いもの―/永いながい眠り すてきな眠り―/それはお墓でしたが 墓石はなく/その人は死ぬのではありません―/お墓のみならず/海には 沢山ベッドがある/その深い部屋には/葬列は墓地の門をくぐった―/その人に お礼に行きました/太陽にはひたすら従える/色褪せつつ なおいっそう美しく}

【詩人論】
エミリー・ディキンスン論(アレン・テイト 訳:新倉俊一)
エミリー・ディキンスンの回想(T・W・ヒギンスン 訳:高田宣子)

編者解説 女性詩人の原型《プロトタイプ》
年譜
作品番号順索引
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