
2011年 四六判 ソフトカバー P333 帯・カバー少スレ、端少イタミ 小口僅シミ汚れ 地僅イタミ
“百余年前の様々な知的実践の実例を掘り起こし、郷土玩具を学問的に位置づける新たな試み。”(帯文)
“江戸時代への懐古と西洋文明への賛美。
相反する憧憬が交差した近代日本「趣味の思想史」。
大正の関東大震災がコレクションを消失させても、 趣味に生きる知識人は交流を保ち「郷土」を考えた。”
“柳田國男や渋沢敬三といった研究者が、郷土玩具趣味と民俗学とを分離したのはなぜか。”
“郷土玩具は「無意識の郷愁」を生み出した。”
“◎本書主要登場人物
ベンヤミン/西澤笛畝/内田魯庵/坪井正五郎/鷺亭金升/西澤仙湖/清水晴風/淡島椿岳/淡島寒月/岡本綺堂/幸田露伴/山中共古/折口信夫/有坂與太郎/川崎巨泉/武井武雄/柳田國男/渋沢敬三/小谷方明/山本鼎/石黒忠篤/仮名垣魯文”
(帯裏紹介文)
目次:
はじめに
凡例
【第一章 おもちゃに投影された近代】
第一節 言説が交錯するメディアとしてのおもちゃ
1 描かれたおもちゃ売りから
2 出発点としてのベンヤミン
3 デザイン史が拓くおもちゃの可能性
4 美学が拓くおもちゃの可能性
第二節 郷土玩具研究の展開
1 童心・郷土・古い信仰に対する欲望
2 商品としての玩具における子どもらしさの表象
3 文化財化する戦前の郷土玩具コレクション
4 在野の知識人のネットワーク形成
コラム 郷土玩具を旅する(1) 初市と雉子車・花手箱
【第二章 趣味の世界の胎動】
第一節 雅俗混交が生みだした新たな価値
1 「ノンキ連中」の世界
2 清木晴風と『うなゐのとも』
3 価値創造的な趣味家の交流
4 反「美術」としての郷土玩具
第二節 欧化熱と江戸趣味の融合
1 趣味家の先駆性
2 淡島寒月の欧化熱と江戸趣味
3 アウトサイダーとしての趣味家と社会諷刺
4 転機としての関東大震災
5 社会に向けて「説明」される趣味
第三節 蔵書趣味の時代
1 江戸の書物と「町の学者」
2 蔵書に学んだ幸田露伴のおもちゃ論
3 岡本綺堂における和洋の融合
4 江戸趣味とおもちゃへの関心
5 関東大震災で灰燼に帰したコレクション
第四節 蔵書趣味と土俗研究を通した蒐集実践
1 山中共古の蔵書趣味
2 趣味と学問をつなぐ回路としての土俗研究
3 好事家の学問の二つの道
コラム 郷土玩具を旅する(2) 凧はなぜ華やかなのか
【第三章 趣味の世界の開花】
第一節 肥大化する趣味の世界
1 東西の巨頭: 有坂與太郎と川崎巨泉
2 到達点としての『日本の郷土玩具』
3 差異と統合の論理としての「感覚」
第二節 定型化される郷土玩具の記述法
1 研究雑誌で議論される郷土玩具
2 図鑑化される郷土玩具
3 マップ化される郷土玩具
4 格付けされる郷土玩具
第三節 郷土玩具の蒐集ブームと研究ブーム
1 地方都市:和歌山における郷土玩具ブーム
2 郷土玩具研究会と会誌『紀州郷土玩具』
3 融解する郷土玩具趣味と民俗学の境界
コラム 郷土玩具を旅する(3) 商売の資本金と繁盛祈願のダルマ
【第四章 趣味と学問の分離】
第一節 文化の動態への視点と郷土玩具批判
1 柳田國男と玩具趣味
2 昔話と童話の対比
3 遊戯と玩具の対比
第二節 〈信仰の残存としての玩具〉論
1 実験としての『こども風土記』
2 柳田國男の玩具概念
3 遊戯・玩具論のケーススタディ
4 信仰の残存としての玩具
5 柳田國男が避けたもの
第三節 玩具研究から標本としての民具へ
1 渋沢敬三とアチック・ミューゼアム
2 郷土玩具の定義をめぐる不満
3 郷土玩具から民具の概念へ
4 渋沢敬三が避けたもの
コラム 郷土玩具を旅する(4) 玩具に託された威風
【第五章 趣味と創作における葛藤】
第一節 在野の研究者からの現状批判
1 小谷方明による農民美術運動批判
2 農民美術運動のコンセプト
3 農民美術運動と郷土玩具との距離
第二節 新たな趣味としての創生玩具
1 創生玩具のコンセプト
2 郷土玩具の復興という創作
3 国内観光ブームと創生玩具
コラム 郷土玩具を旅する(5) 極彩色の船の美学
まとめ
1 趣味の時代の終焉
2 維新後の価値転換と空白の時期における知的生産
3 郷土玩具の造形的解釈の複数性
4 郷土玩具の新解釈
参考文献
書誌名索引
おわりに