
2024年 四六判 P312 帯付 カバーごく僅イタミ
“シンパシー(共感)に乏しい人間の描写からの考察
エリオットが文学様式としてのリアリズムを採用する目的は、登場人物への理解を深め、仲間としてのシンパシーを高めることにある。
リアリズムの要件に立ち返って作品を通時的に眺めることにより、作家の道徳観が成熟するとともにリアリズムが進展してゆく過程を検証する。”(帯文)
目次:
序章
(1)本書の目的と方法
(2)エリオットの道徳観とリアリズムの関係についての先行研究と本書の意義
(3)本書の構成
第一章 エリオットの小説のリアリズム
(1)小説の起源と「形式的リアリズム」
(2)リアリズムと写実
(3)十九世紀イギリスのリアリズム小説の特色
(4)エリオットの小説とポスト構造主義批評
第二章 エリオットの道徳観とシンパシーとリアリズム 「ジャネットの悔悟」における比喩表現を例として
(1)エリオットの道徳観とシンパシー
(2)シンパシーの一般的概念
(3)「ジャネットの悔悟」に見る比喩表現によるシンパシーの描き方
第三章 語り手の心の鏡に映らないヘティ 『アダム・ビード』のリアリズム再考
(1)ホール・ファーム時代のヘティの心理描写
(2)放浪中のヘティの心理描写
(3)法廷と監獄でのヘティの心理描写
第四章 洪水の結末とシンパセティックなトム 『フロス河畔の水車場』におけるリアリズムの進展
(1)洪水の場面における事件の蓋然性の低さ
(2)トムの性格描写に現れたリアリズムの進展 ―シンパセティックなトム
(3)トムの変貌、弱者トムの不在とリアリズム
第五章 シンパシーとシンパシーの欠如の交差 『ミドルマーチ』における道徳観の成熟とリアリズムの進展
(1)中期小説におけるリアリズムの後退と進展
(2)『ミドルマーチ』のリアリズムに関する先行研究と本章の立場
(3)カゾボンの道徳的堕落
(4)ロザモンドの夫リドゲイトの幸福への貢献
第六章 『ダニエル・デロンダ』におけるモダニズム的手法の採用 人間の根本的善性への信頼の揺らぎ
(1)語りの視点と手法
(2)グランドコートの性格 ―徹底的にシンパシーに欠ける人物の登場
(3)フェッチとグウェンドレンに対する虐待の場面の描写
(4)グランドコートの溺死の場面の描写
終章
あとがき
引用文献
初出一覧