
2007年 四六判 P210 帯スレ、少イタミ カバー少イタミ、内側少時代シミ 天地小口時代シミ
“なぜ女は化けて出るのか?
女性、怪異から〈怪異〉の構造を透視し、女幽霊の正体を読み解く”(帯文)
“本書のテーマを平たく言えば、「なぜ、女性ばかりが幽霊となって化けて出るのか」ということになる。すぐに想起される解答は、「女性はたえず、弱者の側に置かれ、不当な暴力に虐げられてきた、だから、死後、その無念の思いをはらすために化けて出るのだ」というものである。もちろん、この図式に当てはまる物語や事件もたくさんあるだろう。ただ、詳細に調べていくと、それだけでは説明しきれないような様々な疑問や問題に出くわす。
…〈略〉…
…怨念を抱えたまま現世を漂う女性の霊、といったような文化表象は、性差の問題だけを告発しているわけではない、ということだ。怪異現象の担い手となった女たちの表象は、その否定性を媒介として、異なる次元の問題系を誘引し、取り込み、融合する。そして、ジェンダーとは別の領域においても、反価値の側から日常性=自明視された制度性を告発しはじめる。〈女の怪異学〉というテーマを扱う困難さと可能性はここにある、そう私たちは考えている。”(本書「はじめに」より)
目次:
はじめに
【第I部 〈成仏〉できない女たち】
第一章 王朝物語における怪異 ―六條御息所を中心に―
第二章 負の継承としての怪異 ―坂東眞砂子『狗神』と京極夏彦『姑獲鳥』における憑き物筋―
第三章 恋する幽霊の系譜学 ―「志怪小説」から『怪談牡丹灯籠』まで―
【第II部 日常性への懐疑】
第一章 幽霊は語りはじめる ―〈ことば〉から見た三遊亭円朝の怪談噺―
第二章 蘭郁二郎と人造美少女たち
第三章 悪意と聖性 ―坂口安吾『夜長姫と耳男』―
第四章 抑圧される〈私〉 ―円地文子『女坂』・『女面』―
【第III部 母性と怪異】
第一章 トニ・モリスン『ビラヴィド』における幽霊
あとがき