1992年 20.2×27.8 P101 端僅反り 表紙僅イタミ 天地小口少汚れ 巻頭・巻末ページ端時代シミ
“ケルトの宗教の中核に潜む秘儀とその本質を体現する儀式は常に捉えがたいものである。往々にしてケルトの神秘論者は妖精や霊的世界をロマンティックに強調するあまり、戦士社会に生きたケルト人の精神性や、彼らが宗教をもっていたという実さえも覆い隠してしまった。詩人や祭司集団の鍛えられた記憶力によって保持された古代の口承の伝統は、法や伝説や部族の教えを不朽のものとしたため、文字を書き記すという行為を不必要たらしめた。しかもケルトの戦士英雄たちには彼らの生や行為を宿命づける禁忌が課せられていたように、書き記すことのタブーは占い宗教が存続するかぎり生き続けた。
ラテーヌ文化に結びつく文様のスタイルは、草花のパターンや抽象的シンボルを自由奔放、空想的に、しかし様式化しに表した装飾を特徴とし、1000年後ブリタニアやアイルランドで作られるケルトの金工品や石彫や写本装飾でも依然支配的なものとなった。
ケルトの奥義は、光と間、夜と昼のあいだにある薄明で、雨でも海水でもなく河でも泉水でもない露や、また草でも木でもないヤドリギなど、事物が中間の領域で融合する状態によって明瞭になる。墳丘《シー》からやって来た英霊、「女から生まれなかった男」は、「今は汝の生命をコントロールする者はいないから」と告げ、クーフリンに眠りに就くよう促す。死と再生の中間領域で英雄は死んでもいなければ目覚めてもいない。アーサーが〔グラストンベリーの〕丘の麓で眠りに就いているように、英雄は、古代の夢の王国の宇宙的な体現者として儀礼的に認可された「かつての王にして未来の王」の状態でいるのだ。”(表紙紹介文)
目次:
古代宗教 {三態一組の女神/英雄の王国/呪術師と宗教儀礼/不思議の旅/キリスト教のヒーローたち}
図版
資料図版とその解説 {天空の神殿/内なる探求/螺旋の旅/原初のエネルギー/聖なる泉/角をもつ者/永遠の存在/戦士/名づけの行為/錯綜した瞑想/獣の力}
訳者解題―ケルトの神秘性
引照・参考文献一覧
図版資料所蔵先一覧