1997年 ページ部分14.8×22.2 P245 帯僅汚れ、背少ヤケ 函背から端にかけてヤケ 本体背僅ヤケ 小口僅汚れ ページ数ヶ所に消しゴムがけによる若干の褪色 付録小冊子『訳者しおり』付
“「絲の太陽たちが/灰黒色の荒地の上に。/………/まだ歌える歌がある/人間の/かなたに。」
ツェランは卓越した詩の力で、ユダヤ人強制収容所体験によって極限にまで追いやられた特異な生活世界を、普遍的な言語表現にまで昇華させている。”(帯文)
ドイツ系ユダヤ人の詩人・パウル・ツェランの、生前に発表された最後の詩集。
目次:
【I】
刻々/フランクフルト、九月/偶然はいかさまだ/誰が支配しているのか/咬傷/永遠に深い地下坑で/見える/回り道のトランプ/麻袋の僧帽/痙攣/あなたの両眼を腕に抱きかかえて/ヘンダイエ/ポー、夜/ポー、後刻/種馬/一オンスの真実/ざわめきのなかで/リヨン、射手たち/頭たち/ぼくはどこにいる/もうとっくに敵に見つかった者たちが/あなたの封印はすべて破られた? いや決して
【II】
眠りの破片/真実/近くの/匐い出た/永達たち/人形のかたちをしたユキノシタ/そのさなかへ/峯々を/雨水に浸っている足跡の上での/白いざわめき/悪魔のような/暗黒の接ぎ木された/もう一つの/心の坑を堀りさげて/勤勉に/衝突し合ってこわれる/天国に安らうようにくるまれて/ぼくが分らないでいると/住みついた、離れていく/巨大な/嘶き声が上げる死者のための祈り/永遠どもが猿芝居を演じている/ダストシュートの合唱
【III】
悪魔が取り払われたあっという間/覆い/愛が/おまえは/右手に/難破船のようにばらばらになった禁忌/憤怒の巡礼人の航海/静寂よ/ただ一つしかない/苦渋にみちた熱燗のワインを飲みながら/斜めに/心の文字のパン層を一面まきちらしたような/よるべなく/絶対の鐘音/永遠も/夜半になって/落としだねたち/丘の列にそって/さあ、ぼくらは/燃えかすをはらいのけながら/盲目の魂になった者/そばにいる女/鷗の雛たち
【IV】
アイルランド風に/綱《ロープ》/索《つな》/にぎにぎしいアナウンス/圧延されている/油のように/その者とともにいる/天使と同じ質料の/はるばると吹き寄せる光り輝く種子/言葉の洞穴に豹の毛皮を/高い世界は/ぶつぶつと不明瞭な言葉を呟いている/……いかなる安らぎも/まぢかの大動脈弓の/太陽年を投げ捨てよ/おまえが災厄の破片を見つけたので/時が来た/唇
【V】
力、暴力/陽射しの中の漆喰/饒舌の壁また壁が/孤児と化して/二人の/ころがして持ち去られた/色彩となって/燕が/白く/身に一糸まとわぬ女よ/沈黙が突く/癲癇/鳩の卵大の腫瘍/冬枯れの/外を/誰がふるまったのだったか?/からまった頭の中よ/名など/思ってもみよ
訳者あとがき