
平成4年2刷 A5判 カバー僅スレ、端僅イタミ、内側時代シミ
“遊行の聖と定住生活者との交渉を軸に、民衆の信仰を見つめなおし、新たな日本宗教論を構想する注目の書。”(宣伝文)
“古来、人びとは生活のなかでさまざまな機会を通して神仏の霊威にふれ、遊行の聖たちは、社会の外から不思議な力をもって訪れてきた。遊行漂泊の宗教とは、定住する生活様式の彼岸に隔絶した宗教ではなく、いわば定住生活者たちの鏡として、多様な価値観の源泉となった。本書は、遊行聖の宗教を通し、新たな日本宗教論を構想しようとする。”(カバー裏紹介文)
目次:
緒言
序章 日本宗教の遊行性と聖
 一 はじめに ―霊場の時代―
 二 霊場の発生と成長
 三 生と死をこえる空間
 四 民衆と霊場
【第一部 巡礼論】
第一章 近代における旅と宗教 ―「まれびと」の変質―
 一 旅の喪失
 二 近代日本と四国遍路
 三 巡礼の規制と保護
 四 結語
第二章 講と霊場参詣
 一 はじめに ―現代社会と講集団―
 二 民俗社会と講集団 ―その多様性―
 三 成人儀礼と巡礼講
 四 大師講と新四国霊場
 五 結語 ―講・在家の宗教集団―
第三章 巡礼行者の宗教的達成
 一 はじめに
 二 巡礼思想の自覚
 三 巡礼の理念と教団の論理
 四 飛行する行者
 五 曼荼羅の旅
第四章 弘法大師の母 ―あこや御前の伝承と四国霊場縁起―
 一 はじめに
 二 あこや御前の伝承
 三 「高野の巻」
 四 弥谷寺の伝承
 五 慈尊院の伝承
 六 結語 ―高野山から四国霊場まで―
第五章 四国遍路の行者とその宗教活動 ―宥弁真念『四国福礼功徳記』を中心に―
 一 四国霊場記三部作の成立
 二 宥弁真念
 三 『四国編礼功徳記』と真念および寂本
 四 結語
【第二部 民俗宗教論】
第一章 室町期における宗教の風流化と寺社参詣
 一 はじめに
 二 参詣講の成立
 三 寺社参詣の話
 四 宗教の大衆化 ―風流と遊楽―
第二章 山の法師と里の勧進
 一 山の法師の飛鉢法
 二 会津恵日寺のイナバツ
 三 能登石動山の知識米勧進
 四 山の法師の里勧進
 五 結語
第三章 冥界からの救済 ―地蔵信仰を題材に―
 一 もう一つの『信我物語』
 二 『地蔵菩薩霊験記』と地獄冥界譚
 三 地獄冥界譚と民俗宗教
 四 結語
第四章 たたり・怨霊・異人 ―個と社会の葛藤をめぐって―
 一 はじめに ―懲罰とたたり―
 二 膨脹する個 ―崇徳院の怒り―
 三 たたりのパラドクス ―異人と民俗社会―
 四 結語
補論 民間信仰論から民俗宗教論へ ―仏教民俗論の前提として―
 一 はじめに
 二 民間信仰論の意義
 三 「共同体」からの離陸 ―ムラの消滅とともに―
 四 ヒジリへの関心
 五 結語
あとがき
成稿一覧
索引