2000年 文庫判 P332 帯破れ補修 カバースレ、汚れ、端少イタミ 小口僅汚れ ページ角僅折れ跡
“「母」に護られた勇士
闊達な女たちと、エロスを避ける男たち
八犬伝から「近代」を読み解く”(帯文)
“曲亭馬琴の代表作『南総里見八犬伝』。歌舞伎でもおなじみのこの長い物語は、はたしてたんなる〈勧善懲悪の封建的冒険活劇〉なのか。かろやかに境界をとびこえて、綺想を広げてみよう。たとえば、ユートピア・安房の「大いなる母」のもとへ集まる犬士たちは、ミシシッピを筏で流れ下るハックルベリー・フィンだ。浜路を拒絶する犬塚信乃は、オフィーリアの死に安堵するハムレットだ。 ―「水」「少年」「竜」などをキーワードに、トウェインやメルヴィルを重ね、イーグルトン、ユングをひきながら、八犬伝に近代の人間像を読み解く、比較文学からの八犬伝論。新編として、「江戸の二重王権」「『八犬伝』の海防思想」の二論文を増補。”(カバー裏紹介文)
目次:
【I 八犬伝綺想】
序言
第一章 竜の宮媛
第二章 玉なすごとき玉梓
第三章 こよなき仇 ―破滅と旅発ち
第四章 永遠の少年たち
(一)犬塚信乃
(二)艶麗なるオフィーリア
第五章 坂東のラヴレイス ―網干左母二郎
第六章 再生する女たち
第七章 流離する妖婦 ―船虫
第八章 川と少年の物語
(一)逸走する孤舟
(二)トム・ソーヤー降臨
第九章 白の系譜学 ―メルヴィル
第十章 消滅する竜たち ―「第九輯」の謎
第十一章 母胎への逃走
(一)渡河と童児神
(二)祝祭としての戦争
第十二章 父の帰還
(一)大法師、ふたたび
(二)奔馬のごとく
【II 江戸の二重王権 ―『南総里見八犬伝』再考】
はじめに
一 神余・金碗氏の意味するもの
二 外来王と流され王
三 母の身体と父の排除
【III 『八犬伝』の海防思想】
一
(1)「水滸伝」
(2)外敵
(3)安房=日本の「置き換え」
二
(1)「操練」の思想と国民皆兵
(2)水戦・陸戦
むすび
注
参考文献
文庫版のためのあとがき
解説 八犬伝を構造主義から読む(森毅)