1995年 四六判 P286 カバー背ヤケ、内側時代シミ 天・小口時代シミ
“世俗社会では女性の役割が規制されて公的な場から次第に排除され、また男女の差も激しくなったが、尼となることは、一面で女性を縛っている制約から自由な立場を手に入れることだった。出家すれば婚姻関係は基本的に解消し、妻という役割から解放された。また、尼になることで、一定の行動の自由も得られたのである。”(カバー紹介文)
“尼削ぎや髪切りのような中途半端な髪型は、いずれにしてもその形態は一見したところは同じであり、むしろマイナスの評価を受けやすかったといえよう。そしてその短い髪の姿は、社会的身分の低下を示し、一人前の女性としての社会的な体面を失うことをともなうものであった。そして、本来は性を解脱していることを象徴している尼姿の女性に対して、その女性が尼となる由来や、その前歴に対して、性に結びつく憶測がなされやすかったのではないだろうか。女性の髪切り・尼姿が、性にかかわる制裁を連想させ、その制裁を受けた女性自身が男性の性の対象となりやすい存在であると関連づけられやすかったのではないだろうか。そしてこのことは、おそらく、中世・近世の髪を切った女性、熊野比丘尼などの尼姿の女性に対する、性の問題を含んだ社会的差別の問題にもつながっていくと思われる。”(カバー袖紹介文)
目次:
序女の信心史
第一章 尼削ぎ攷 ―髪型からみた尼の存在形態
はじめに
一 尼削ぎの宗教的意味
二 尼削ぎの社会的意味
おわりに
第二章 妻の出家・老女の出家・寡婦の出家 ―古代の事例を中心に
はじめに
一 妻の出家 ―既婚女性の出家と婚姻関係
二 老女の出家 ―隠退・世捨て死と出家
三 寡婦の出家 ―貞節・追善と出家
おわりに
第三章 女性の発心・出家と家族 ―中世後期の事例を中心に
一 比丘尼の懺悔
二 髪切り離婚出家
三 寡婦の出家と婚姻関係
四 家政と出家
五 娘の出家と家族
六 足の自由
第四章 古代における母性と仏教
はじめに
一 母性の尊重と仏教
二 僧と母
三 僧と母の絆
おわりに
第五章 「洗濯と女」ノート
一 なぜ洗濯をするのは女なのか
二 僧衣を洗濯する女
三 女の仕事と洗濯
四 洗う力と女
おわりに
補 血穢について
第六章 女の地獄と談義:
一 法華経談義と女だけの血脈授与
二 血盆経信仰への展開
第七章 院政期における夫と妻の共同祈願
はじめに
一 男女名併書の写経・造像銘の考察
二 祈願内容の検討
三 夫妻の共同祈願の役割
おわりに
あとがき