1995年 四六判 P293+索引P14 カバー背ヤケ、内側時代シミ 天・小口時代シミ
伝染病とその薬、薬として入ってきたミイラ・アヘン・コーヒー、人参や大黄といった漢方薬の受容など、江戸時代の医薬にまつわる興味深いトピックをとりあげる。
“ミイラ ―中国では儒教が拒否し、日本では薬効を受け入れる。それは女性のための血の道薬だった。一四九三年にヨーロッパに伝わった梅毒は、早くも一五一三年(永正十)ごろには日本に上陸する。江戸時代の医薬をストー
リーでなく、ヒストリーで読むおもしろ文化史”(カバー紹介文)
“生薬を薬方に従って調合し効能書を付けて販売したのが売薬である。店売りと行商とがあった。合薬(あわせぐすり)すなわち製薬(予薬)を店に置いて売るのは、江戸時代前期に京都・江戸・大坂で盛んになる。三都では町人層に医薬が広がり滲透していく。 医薬の縦広がりといえよう。行商売薬は、この時代の中期から後期にかけて盛んになり、主として配置売薬を行う。やがてその配置網はほとんど日本全国に広がる。医薬が都市から地方に延びる。 医薬の横広がりである。しかも富山・日野・田代などの配置売薬行商は医薬を多くの人々の家庭に入れて国民の常備薬にした。このことは無医村がふつうのことであった時代に、まことに日本医薬文化史上、画期的な出来事であった。”(カバー袖紹介文)
目次:
I 江戸時代の三大慢性伝染病
1 梅毒
{山帰来―六十八万一千二百五十人の薬/家康の息子二人も患う/S・Pが来た道/新薬山帰来/水銀剤/杉田玄白の処方}
2 肺結核
{天下ノ父母ヲシテ嘆カシムル第一ノ病ナリ/症候―一千年前の観察/温補剤/桂枝労瘵方/蘭方医の労瘵薬}
3 癩病
{癩病人は捨てられた/一千年前の微生物病原説/大風子}
II 江戸時代の三大急性伝染病
1 赤痢
{裏急後重/大流行/赤痢の薬}
2 腸チフス
{中国の瘟疫、西洋の神経疫/症候―呉有性の観察/呉有性の薬方/神経疫/緒方洪庵の処方}
3 コレラ
{一八二二年日本に侵入/激しい嘔吐と下痢/漢方vs蘭方}
III オランダ船の輸入薬
{漢薬をひたすら輸入/将軍吉宗・家重らの注文洋薬/オランダ通詞の受贈洋薬/庶民のための洋薬}
IV ミイラ・アヘン・テリアカ・コーヒー
1 ミイラ
{ミイラ ―「乾燥した人間の肉」/「ミイラ」は日本語である/ミイラは止血薬である/延宝期のミイラブーム/ミイラの静かな流行}
2 アヘン
{オランダ船が初めて輸入/漢方はアヘンに冷淡である/ヨーロッパのアヘン剤/中国船のアヘン輸入}
3 テリアカ
{アンドロマケのテリアカ/一九世紀のテリアカ}
4 コーヒー
{コーヒーは薬/モカコーヒーとジャワコーヒー/オランダ船のコーヒー輸入}
V 中国船の輸入薬
{化政・天保期の漢薬}
VI 人参・麻黄・大黄
1 人参
{とても高価な薬 ―朝鮮人参・唐人参/価格低落 ―お種人参と広東人参/人参の「能」と「毒」}
2 麻黄
{発汗解熱王/輸入が急増}
3 大黄
{「下の」主役/輸入増大は疫史を語る}
VII 和薬
{国産薬/和薬百種・産国}
VIII 国民の常備薬
{京都の売薬/江戸・大坂の売薬/配置売薬/国民の常備薬}
あとがき
参考文献
索引