昭和59年4刷 文庫判 P309 裏表紙端縛り跡 小口少ヤケ、僅時代シミ
昭和50年8月から51年8月まで朝日新聞文化欄に連載後、単行本として刊行されたものを文庫化。
説話集、随筆、物語、中国古典文学からの引用など、近世以前の日本の書物に記録された奇談を集める。
巻末に使用文献解題を付す。
目次:
人異篇 第一
1 奇行 {長柄の橋井出の蛙/増賀上人の入滅/強盗に返した小袖/鋳物師と枕草子}
2 執着 {小鯵集という仇名/ますほの薄の事/鬼と戯れる染殿の后/愛玩の鶉を焼く侍/隠した銭を守る蛇/極悪者源大夫の往生/経をよむ髑髏の舌}
3 宿根 {悪霊の左大臣/朝成生霊となる/広相の死霊犬となる/行基悪霊を見破る}
4 遊魂 {水中に見える妻/海底からの遠隔感応/カントも認めた事実/青い火の玉の遊魂}
5 予知 {脈搏で津波を知る/眠ったまま相手を倒す/予知能力のなかった行基/豆をはさむ慈恵僧正/入滅を予告した僧}
6 占験 {障子越しの観相/伴善男の大きな夢/餓死した観相家/待ち伏せていた法師/命あっての僧位/勘文を信じない白河院}
7 術の一 {涙で病を治す験者/父を蘇生させた浄蔵/浄蔵の将門調伏}
8 術の二 {地神に追われた陰陽師/呪い殺された算博士/式神を隠した安倍晴明/晴明道摩の術を見破る/式神に殺された陰陽師}
9 術の三 {道範外法の術を習う/陽成天皇外法を習う/口を利く外法使いの人形/馬の沓に変わった饅頭}
10 名人 {眠りながら打つ鼓/百割る二を算盤で弾く/菓子を弁別する老中/老姥、鼓の上達を知る/碁の名人に勝つ妖しい女/曲を逆様に吹く笛の名人}
11 武勇 {名人の矢を外す従者/目をつぶった加藤清正/隣家の刃傷を察知した居候/死人を警戒する武者/強盗を切り捨てる飛脚/源頼信人質を救う}
12 大力の一 {馬を差し上げた中小姓/大石を投げる道場法師/硬くて歯の立たない握り飯/成村と常世の対決}
13 大力の二 {宗平に挑んで破れた時弘/負けて出家した相撲/相撲を押しつぶした重忠/公達、相撲の首をくじく/踵を千切った大学生/二階の戸をたたく大男}
14 長寿の一 {八十九歳で子を設ける/百五十五歳の志賀隋応/薩摩から届けられた箱/武内宿禰と浦島子伝説/死んだ白箸翁を見かける}
15 長寿の二 {ケチで長生きした荻野喜内/枸杞で長寿の竹田千種/灸で長生きをした満平}
神怪篇 第二
1 不死 {入京した八百比丘尼/霊水を飲んだ越前の大男/生き残った常陸坊海尊/地仙丹と地骨酒}
2 神仙 {殺されても死なぬ仙人/石羊になった修羊公/城市を移動させる太玄女/左慈、曹操を翻弄する}
3 詐術 {始皇帝を欺いた力士/『史記』、武帝を皮肉る/寒食散を飲みすぎた道武帝/錬金術に失敗した劉向}
4 仙道 {白石を煮て食った鮑《青+見》/空を飛んだ陽勝仙人/子供の竿に追われた仙人}
5 法力 {材木を飛ばした久米仙人/尸解仙となった都良香/雷神を縛った泰澄}
6 飛鉢 {空を飛ぶ米俵の列/寂照が飛ばした鉢/空中で鉢を襲う鉢}
7 死後 {死後の霊を疑った孔子/天に帰る魂、地に帰る魄/城隍神も手を焼く鬼}
8 冥府 {中国で格の下がった閻魔/現世の官庁を模した泰山府/賄賂をつりあげる冥吏/清廉で飢えている神}
9 地獄の一 {供応を催促する官吏/死者と口論する冥吏/小野篁、藤原良相を救う/藤原高藤、篁をおそれる/藤原重隆、死後冥官}
10 地獄の二 {無間地獄に落ちた源義家/現世に出張して来る地獄/母を殺そうとした防人}
11 証言 {三途河を渡った広国/地蔵に助けられた盛孝/牛頭の非人に捕らえられた金持ち/四十日目に誕生した行者}
12 実見 {ギリシャの冥府タルタロス/冥府に交渉に赴く県令/富士の人穴を探る新田四郎}
13 地蔵 {馬上から拝まれた地蔵/地蔵と閻魔は同一の仏/戦場で矢を拾う地蔵}
14 転生 {牛に生まれ変わった恵勝法師/鯰に生まれ変わった父を食う別当/二度も馬に生まれ変わった乳母/転生による報復は繰り返す}
15 前生 {牛から生まれ変わった僧/犬の吠えるのに似た読経/どうしても覚えられない経文}
16 再生 {伴大納言の生まれ変わり/官僚政治家の理想像/花山院の前生は大峰山行者/藤蔵再生して勝五郎となる}
17 記憶 {自家に生まれ変わった非熊/縛られた熱田大宮司/撮りしめた掌の文字}
18 鬼の一 {こわくない中国の鬼/無鬼論に負けて怒った鬼/人を食う仏教の鬼}
19 鬼の二 {庁舎で鬼に食われた役人/節穴から鬼に引き出される/追って来る縄状の鬼/鬼となった猟師の老母}
異類篇 第三
1 霊威 {なぐりかかる門額の字/通行人を踏みつける逆襲の童子/清正の鉄砲悪口に怒る}
2 器物 {杓子と話をする枕/鞠の精と問答した成通/窓から顔をのぞかせる法師/名刀にうなされる足軽}
3 木精 {人夫を蹴殺木の精/木から飛び出す妖怪/主人に説諭される松の木/夜ごと現われる石の馬}
4 野猪 {普賢に化けた野猪/野猪とむささびは光る/生贄を膾にしようとする猿神/猿神をとらえた旅の僧}
5 蟇 {鼬の精を吸いとる蟇/人を転ばす陽明門の蟇/細川勝元の本性は蟇か/蛙合戦と政情不安}
6 川怪 {人を水に引きこむ怪/鉄砲で打たれた河童の図/夜ごとに現れる亀の怪}
7 虫怪 {報復にやって来た蜂の大群/寸白が生まれ変わった国守/鏡のように光る谷間の蜘蛛}
8 猫異 {主人の枕頭で踊る猫/「南無三宝」と声を出した猫/尾を切られた老母/妖鼠と戦う忠義な猫}
9 狐怪の一 {狐の法事によばれた僧/馬に乗せてもらいたがる若い女/狐に化けた詐欺師}
10 狐怪の二 {狐と暮らす賀陽良藤/門限を守る尾張藩の狐/人に憑いて食事をする狐/足軽狐との約束を破る}
11 狐怪の三 {先住権を主張する狐/石を投げこむ騒霊/歌をまちがって書く狐}
12 龍譚 {最初はなじまなかった龍/昇龍の多くは龍巻か/山崩れから現われた龍頭/硯の中にひそむ龍}
使用文献解題