昭和53年 四六判 P286 帯付 カバー内側時代シミ 天時代シミ
“推理小説にもこんな読みかたがある!
社会的視点から《ホームズ物語》を解剖して、ヴィクトリア朝時代の華やかな大英帝国の裏面を描き出した日本で最初の本格的ホームズ論。”(帯文)
“日の没することなしと言われ、英国史上最高の繁栄を誇ったヴィクトリア朝の文化は爛熟して、首都ロンドンはそれにふさわしい威容を誇ってはいたものの、イギリス人の三分の一は貧困にあえいでおり、強盗や殺人などの事件の絶え間がなかった。そんな時代に社会の裏面を駆けめぐり、犯罪やスキャンダルに鋭いメスを加えるシャーロック・ホームズの腕の冴えは、単なる犯罪史というよりは、英国社会史の一部としてぼくたちの好奇心をかりたてずにはおかない。 ―“はじめに”より―””(カバー袖紹介文)
目次:
はじめに
【I 探偵の理想的人間像】
ロンドン一ひどい下宿人/癖のある「生き字引」/六分の俠気、四分の熱
【II 推理学を分析すれば】
恩師ベル博士の観察力/観察から推理へ/材料を活かす/読心術の種あかし
【III 麻薬と精神分析】
コカインの夢見心地/コカイン中毒治癒の謎/フロイトの「コカイン讃歌」/フロイトの失敗二つ
【IV ロンドンに足跡を探る】
ベイカー街/リージェント街/ランガム・ホテル/セント・ジェイムジズ・ホール/チャリング・クロス/ノーサンバランド・ホテル/ロイヤル・アルバート・ホール/ライシーアム劇場/スコットランド・ヤード/大英博物館/セント・バーソロミュー病院
【V 「禁じられた性」のあかし】
ヴィクトリア朝の性/ホームズの「禁じられた性」/《緋色の研究》に秘められた性/《赤髪組合》に露出した性/隠された性
【VI 「栄光の時代」の舞台裏】
世界制覇の野望/繁栄から恐慌へ/アイルランドの反英闘争/市場としてのインド/ロシアへの拠点アフガニスタン/宝庫アフリカ大陸/流刑地オーストラリア
【VII すべての水はテムズにつながる】
ホームズと海の女王たち/グロリア・スコット号の謎/難破船のむれ/オーロラ号を追って/恋人の名を船名に
【VIII 登場人物の謎を解く】
抜群の記憶力を活かす/ホームズへの憎しみ/ニーチェの影を追う/ドイルも思わず本音を/エリオットやカフカも盗作/ワイルドを嫌ったドイル
【IX 一九世紀英国の「外国人」】
外国とは何だろう/新興成金アメリカ合州国/野蛮人のたむろする中南米/悪漢むらがるヨーロッパ大陸/大英帝国国民以外は人に非ず
【X ドイルも筆の誤り】
ロンドンのスパイたち/ドイルの失点/誘拐事件と足跡/校長もスパイか
【XI 事件のかげの女たち】
悪女と呼ばれる女/浅はかな女/働く女/再婚した女/お気に入りの女
【XII 霧のロンドン一八八七】
予言者故郷にいれられず/文庫本による読書界の革命/不朽の人間味/ひとつのまちと時代の精神
【XIII 世界的人気の秘密】
今なお「拝啓ホームズ様」/人間味と雰囲気の魅力/正義の味方ホームズ/まぐれ当たりの可能性も/ヴィクトリア朝の正義の味方
【XIV シャーロッキアンの読書の楽しみ】
羊頭狗肉/フロック・コートにつぎをあて/シャーロッキアンの四段階/研究のための三種の神器/魅力あふれる七つの興味 {・推理小説史的興味 ・文学的興味 ・歴史・地理的興味 ・社会的興味 ・科学的興味 ・道徳的興味 ・人間的興味}
年代順事件一覧表
参考文献リスト
あとがき