1993年 四六判 P411+地図P2+索引P6 カバー僅汚れ
“オリエントの自然宗教では、神々の栄枯盛衰は植物と結びついている。
しかも、この地域における植物の生長は季節によって繁茂と凋落を繰り返し、それは生と死を暗示している。
豊饒の神の死と彼の冥界での抑留というモチーフはよく知られている。
例えば、ギリシア神話の中では地母神デメテルの娘であった乙女コレは、ブルートの黄泉の国に連れ去られた。
また、季節的な儀式を反映しているカナアンのバアル神話の中では、我々はバアルが冥界でモトという死と不毛の神に打ち負かされるのを見るであろう。
彼の死体は、そこから女神シャパシュ(太陽)と彼の姉妹である豊饒の大女神アナトによって、埋葬のために持ちかえられる。
さらに、メソポタミアではドゥムジまたはタンムズは毎年冥界に下っていくものと考えられ、メソポタミアの神話で最も親しまれているモチーフの一つは、シュメール人のイナンナ、すなわちセム人のイシュタルという豊饒の女神が冥界に下っていくというものである。”(カバー紹介文)
目次:
I メソポタミア ―歴史地理
{シュメール人/砂漠の部族/セム人による支配}
II メソポタミア ―宗教
{アヌとエンリル/水神エンキ/太陽神シャマシュ/月の神シン/母神イナンナ(イシュタル)/ネボとマルドゥク/エレシュキガルとネルガル}
III メソポタミア ―神話
{バビロニアの新年祭/バビロニアの創世神話/イシュタルの冥界下り/アダバの神話/ギルガメシュ叙事詩/ギルガメシュとエンキドゥ/巨人フワワに対する偉業/ギルガメシュは女神イシュタルを拒絶する/エンキドゥの死/ギルガメシュによる不死の探究/ウトナピシュティムと洪水/ギルガメシュによる不死の探索の断念}
IV メソポタミア ―王
{エタナの神話/アッカドのサルゴンの伝説/王の社会的責任/生命の木}
V カナアン ―歴史地理
{土地/文化の発達}
VI カナアン ―宗教
{カナアン文書/主神エル/バアル―天の宮廷の行政官/女神たち/下位の神々/農業のサイクル}
VII カナアン ―神話
{バアル神話/バアルとアナト/家の建造/バアルの死と冥界への下降/バアルの再生とモトの死/優雅で美しい神々の誕生/呪文の中の神話―〈ホロンと蛇〉/〈酔っているエル〉/〈月神と月の女神の結婚〉}
VIII カナアン ―王
{ケレト伝説/ダニエル王の伝説/アクハトの誕生/アクハトの死/豊饒の分配者としてのダニエル/アクハトの死に対する「乙女」の復讐/聖なる王権}
IX イスラエル ―はじめに
X イスラエル ―旧約聖書の神話と歴史
{大いなる解放と契約/葦の海の脱出/シナイにおける神の顕現/申命記的歴史/ヨシュアの征服/原因譚的もしくは説明的神話/サムソンの物語/エリヤとエリシャの物語}
XI イスラエル ―詩篇と予言書における詩的イメージの神話
XII イスラエル ―神の治世
{幕屋の祝祭/創造者としての神/ヨブと神の「王権」/黙示文学/救世主の勝利/サタンの発達}
XIII イスラエル ―王と救世主
{イスラエル―神聖共同体の王/「天界の王」の行政官としての王/ダビデ的救世主/救世主の大宴会/人の子}
訳者あとがき
オリエント神話関連地図
索引