昭和57年 四六判 P360 カバー少スレ 小口汚れ
“●「主潮」「山繭」「青空」「驢馬」「文科」●
大正末から昭和初頭の一時期(1920年代)は空前絶後の同人誌全盛期であり、短命に終るという宿命を孕みながら、無垢な青年群像が互いにきそいつつ良質な多くの作品を生んだ。本書は昭和文学史の源流となった有力五誌を対象に、この時代を広く横に眺め、作家・作品の初発のエネルギー把握をめざして構想され、文学現象のなまの起伏そのものに降りたった新視点の成果である。”(カバー紹介文)
目次:
まえがき
【I 「主潮」】
「主潮」前史 ―尾崎一雄・村田春海などをめぐって(紅野敏郎)
「映像」と詩/「映像」の人びと/「学友会雑誌」の一端/回覧雑誌「極光」
小宮山明敏論序説(金井景子)
小宮山明敏と「主潮」/小説家・小宮山明敏/新感覚派の構図/「武者小路実篤氏の位置について」の意味
「主潮」における岡沢秀虎 ―超個人主義文学の提唱(吉田悦郎)
「超個人主義」とは/「超個人主義」による文学とは/「超個人主義」よりみた文学状況
【II 「山繭」】
初期「山繭」と富永太郎(福田敏弘)
「山繭」における富永の位置/初期「山繭」の精神圏/富永の詩的自己確立
永井竜男と木村庄三郎 ―羽化したもの、しなかったもの(宗像和重)
「山繭」の位置/永井竜男の焦慮/木村庄三郎への評価/それぞれの転換期/羽化したもの、しなかったもの
【III 「青空」】
梶井基次郎「檸檬」を中心に(沢木久枝)
転形期の中の「青空」/解放への希求/現実―その可能性の解体/瞬間の「青空」
外村繁の初期小説 ―「青空」時代の検討(遠矢竜之助)
初期作品の検討―「母の子等!」など/初期作品の検討 ―「春秋」
三好達治の「青空」時代 ―北川冬彦との出会いをめぐって(前田真理)
「模倣」からの出発/北川冬彦との出会い/「谺」と「乳母車」/短詩の試み/三好達治と安西冬衛/「僕等自身の建設」
【IV 「驢馬」】
窪川鶴次郎の「驢馬」時代(大塚博)
「驢馬」発表作品の背景/文学への一つの転機/初期詩編―「荷船」その他/「隣の娘」連作に見る変移/詩から散文へ
「驢馬」期の堀辰雄(伊藤みどり)
初期習作詩編から本格的な活動へ/青年堀辰雄の人生哲学と文学志向/詩と小説の距離
【V 「文科」】
牧野信一「心象風景」論 ―続篇への断層(柳沢孝子)
正統両篇の破綻/自己嫌悪の萌芽/母親像の復活
田畑修一郎「鳥羽家の子供」前後(吉田司雄)
「南方」に至りて/初期習作中の「植物」/「鳥羽家の子供」の位置
坂口安吾「竹藪の家」私論(中村良衛)
竹藪の一家/駄夫という存在
資料=五誌総目次(紅野敏郎)