1985年 A5判 ソフトカバー P132 ビニールカバー少ヤケ、少汚れ ビニールカバー収縮による帯イタミ 小口僅汚れ 裏遊び紙端少ヤケ、時代シミ 扉ページ端少波打
“戦後ドイツを代表するユダヤ系詩人・パウル・ツェラン。一九七〇年春の自殺。遺稿のなかにひとまとめにされた原稿類が発見された。絶望のうちにも、言葉の光で希望をさがそうとする『雪の区域』である。待望の翻訳刊行。”(帯文)
目次:
I
洗われることなく、色どられることなく/おまえはよこたわっている/藤色の大気/風のなかの井戸掘りたち/明けた年/読みとれなさ/娼婦のような日々/何が縫いついているのだろう/ぼくは聞く、鉞が咲いていたと/野鼠の声をたてながら/蜥蜴の/雪の区域
II
あとから吃りつつなぞられる世界/暗黒の投石器をかまえるあなた/一月をとりこめられて/すこし手を休めておくれ/かけら状貨物/斜め上から/木製の顔をした/ラルゴ/夜の秩序のほうへ/袋小路と/何か夜のようなもの
III
なぜこの思いがけない帰郷/汲まれなかったものの中からなぜ/メイプスベリー・ロード/泥酔の中を通ってくる呼びかけ/暗い所にひきだされて/木屑であるあなたを/ルーネ文字が刻まれた石も軌道を変える/あなたの、あなたの/壁の句/エリックのために/誰が無を鋤き返しているのか/アラセイトウ/あなたは両手をひろげて計測する/エリックのために/おまえのブロンドの影/奈落たちが徘徊する/おまえの鬣のこだま
IV
《補聴器の中》/半ば喰いやぶられた/一枚の葉/遊び時間《プレイ・タイム》/忌まわしい過去から/ひらかれる声門/湿原の大地から/湿原台地/原石の鉱箔/段石/蔓を切るナイフで/黄土からつくられた人形たち
V
鋼鉄の弾丸のように飛ぶ、見る力をもった石/そして力そして苦痛/ともに持ちあげられて/落石/ぼくは歩測する/いくつもの警告灯/読む脳神経分枝/きみの夢を/石灰のクロッカス/はや/降りたつ昇降口《ハッチ》で/そしていま/速射―近日点/わたしたち、深いが上にも深いところに住まう者/きれぎれに砕けちった顳顬のかなたで/取りこむこと/暗い谺/永遠が
訳者あとがき