昭和60年2刷 四六判 P322 カバー内側時代シミ 天時代シミ多 小口少時代シミ
“アーサー王伝説は、ヨーロッパ文学の永遠の古典であり、ヨーロッパ人の心の原郷である。中世から現代に至るまで、各国の吟遊詩人、年代記作者、文学者たちの手により、建国神話、騎士道、宮廷風恋愛、キリスト教精神の象徴である聖杯など、さまざまなテーマがうたわれ、絢爛豪華な世界が形成されてきた。
本書は、歴史と伝説の間にアーサー王の実像をとらえ、彼を中心にさまざまなロマンスが生まれ、伝えられた過程を、考古学・地理学・文献学等の成果をもとに平易に語る。騎士道の精華たるアーサーと円卓の騎士たちの世界を、本格的に紹介した本邦初の翻駅書である。”(カバー袖紹介文)
目次:
日本語版への序文
1章 無名の指揮官
{謎の正体/べイドン山の戦い/アーサーの登場/アーサーを無視したギルダス/困難な地名研究/ネンニウスの創作意図/『カンブリア年代記』と『コロンバ伝』/ギルダスとネンニウスの立場/ウェールズの英雄像}
2章 現実から幻想へ
{曖昧な人物像/伝説化の方向/伝説の定着/「魚市場入口」の謎の彫刻/プレトン人の役割}
3章 帝王アーサー
{ジェフリ・オブ・モンマスの生涯/『マーリンの予言』の名声/『ブリテン列王史』の成り立ち/アーサー王の栄光/ジェフリの執筆方法/英雄皇帝の創造/『列王史』の多大な影響/ヴァース師の『ブリュ物語』/ラヤモンの『ブルート』/頭韻詩『アーサーの死』/ジェフリの功罪}
4章 アーサーとアヴァロン
{アーサーの復活信仰/アーサーの墓の発見/二つの資料の奇妙な混乱/「うつろな樫の木」の謎/僧侶の捏造/眠れる戦士たち}
5章 ブリテンの話材 ―フランス語のロマンス
{クレティアン・ド・トロワの登場/『エレック』、『クリジェズ』/『ランスロ』、『イヴァン』/『ペルスヴァル』/『トリスタンとイゾルト』/アイルハルト、ベルール、トマの相違点/「流布本物語」の発展/ランスロットの主役化/聖杯探求の主題/『ペルルスヴォー』、『散文のトリスタン』/アーサー王ロマンスの伝統}
6章 トリスタンとパルチヴァール ―ドイツ語のロマンス
{ハルトマンの手法/ヴォルフラムの執筆姿勢/『パルチヴァール』/理想の愛の姿/魂の成長/ゴットフリートの『トリスタン』/「情熱」の発明/傑出したヴォルフラムとゴットフリート/ヨーロッパ文学としてのアーサー王伝説}
7章 英語のロマンス
{逆輸入された伝説/『ガレスのパースヴァル卿』/英語ロマンスの独創性/ガウェインを主人公とするロマンス群/『ガウェイン卿と緑の騎士』/「首斬り」と「誘惑」/優れた自然描写/完全の追求/ガウェインの地位の向上/フランス語からの翻案作品/ガウェイン像の変遷}
8章 騎士道の華
{謎多き作者、トマス・マロリー/『アーサーの死』の執筆意図/フランス語原典の利用と展開/縦横な個性の発揮/高い精神性への到達/鮮やかな人物造型/騎士の尊厳と威光}
9章 不朽の名声
{テューダー王朝の政治利用/アーサーの歴史的調査/大衆文学化傾向/スペンサーの『妖精の女王』/ミルトン、ドライデン、ブラックモアの試み/一時的衰退期/ワーグナーの楽劇/スコットの『トリストレム卿』/リットンとアーノルドの作品化/テニスンの傾倒/象徴としての登場人物/理想と寓意/ヴィクトリア朝絵画の主題/スウィンバーンの『ライオネスのトリストラム』/アーサー王伝説の戯曲/ロビンソンの『トリストラム』/メイスフィールドの『真夏の夜と韻文物語集』/「ログレス王国」の地理/罪による王国の破滅/ホワイトのコメ ディ/結語}
図版一覧
原注
訳注
解説
訳者あとがき
参考文献
アーサー王文学年表
事項索引
人名索引