1992年新装版1刷 A5判 P222 函背ヤケ、裏僅汚れ
“散文詩というジャンルそのものを創始しながら、ボードレールやマラルメに(そしてブルトンに)再発見され、大きな影響を与えるまで、不当に忘れられていたフランス小ロマン派詩人の残した唯一の散文詩集。”(宣伝文)
“ボードレールが再発見し、マラルメが《ベルトランをご覧、そこには全てがある》と語り、モーリス・ラヴェルがピアノ曲作曲の霊感を得、アンドレ・ブルトンがシュルレアリスムの先駆者と呼んだ、フランス十九世紀の、不当に忘れられた小ロマン派詩人が残した唯一の詩集が本書である。
極度の貧窮と病苦のうちに夭逝した無名の一詩人のこの詩集からこそ、後にボードレールやマラルメに、そして今日の詩人たちにうけつがれることになる《散文詩》という新しい文学ジャンルが始まったのだ。そして、常に、新しい形式は新しい内容を要求する。本書の中に読者は、ロマン主義的な熱狂から、ある別の新しいものへの歩みを、非感動的、写真的な、あるいは芸術至上主義的なエクリチュールへの歩みを、みることができるだろう。”(カバー裏紹介文)
“アロイジウス・ベルトランは、詩を愛するあまり、詩のために死んだ詩人たちのひとりであった。彼の短い人生は、見かけは同じように不幸に見える他のとの詩人たちよりも逢かに不幸であり、すべての不幸な詩人たちの印章を身に付けたまま、 死の中にまでそれを持っていった。 ―サント=ブーヴ
自状すると、もう20回目くらいになるだろうか、有名な『夜のガスパール』を繙いていた時、何かこれに似たことを試みようという考えが、彼の技法で現代の生活を描いてみようという考えが思い浮かんだのだ。 ―シャルル・ボードレール
ベルトランをごらん、 そこには全てがある。 ―ステファヌ・マラルメ
ベルトランは過去においてシュルレアリストである。 ―アンドレ・ブルトン”(函裏紹介文)
目次:
夜のガスパール
序
グィクトル・ユーゴー氏へ
夜のガスパールの幻想曲
フランドル派 {ハルレム/石工/ラザール隊長/尖った顎髯/チューリップ売り/五本の指/ヴィオラ・ダ・ガンバ/錬金術師/魔宴への出発}
古きパリ {二人のユダヤ人/夜の乞食/角灯/ネールの塔/伊達男/タベの祈り/セレナード/ジャン殿/真夜中のミサ/愛書家}
夜とその魅惑 {ゴチック部屋/スカルボ/白痴/小人/月の光/鐘楼下の輪舞/夢/我が曾祖父/オンディーヌ/火蜥場/魔宴の時}
年代記 {オジェ殿(一四〇七年)/ルーヴルの潜り戸/フランドル人/狩猟(一四一二年)/ドイツ騎兵/大部隊(一三六四年)/癩者/愛書家へ}
スペインとイタリア {僧房/騾馬引/アロカ侯爵/ヘンリケス/警報/教父プグナチオ/仮面の歌}
雑詠 {わが藁家/ジャン・デ・ティーユ/十月/シェーヴルモルトの岩の上にて/いまひとたびの春/第二の人/シャルル・ノディエ氏へ}
作者の草稿より抜粋したる断章
{美わしのアルカーデ/天使と妖精/雨/二人の天使/水上の宵/モンバゾン夫人/ジャン・ド・ヴィトーの魔法の旋律/戦いの終った夜/ウォルガストの要塞/死んだ馬/絞首台/スカルボ/彫像家ダヴィッド氏へ}
訳註
ベルトラン略年譜
訳者後記