1996年 四六判 P256 帯背ヤケ カバー少ヤケ、少スレ、端僅イタミ ページ全体にゆるい歪み
“栄光ある文明の影の部分
軍艦築造による森林大伐採 コロッセウムで殺された動物たちの種の危機 ワインに入れられた鉛による中毒 などなど、驚くべき事実が報告される。”(帯文)
目次:
序言
アクロポリスの陰にかくれた森林絶滅
{残ったのは国土の痩せこけた肋骨ばかりである」―アッティカの森林伐採についてのプラトン発言/出典批判の見地からの侵食「症例報告」/文明の凱歌としての森林伐採/アテナイ艦隊用の木材/「レバノンは辱められて枯れ……」―幾世紀にも及ぶ乱伐の帰結/
豪華船、巨大貨物船、海上投資財遺物のための皆伐/ローマ軍用船団―大規模な「森林損傷」の原因か?/古代後期の薪不足/「森林殺戮人」ローマ人?―一つの話と、人に不安を感じさせるその説明}
「……そして醜い傷痕の種を蒔いた」 ―戦争による環境破壊
{「刀剣を先に!」ギリシア的平和概念/古代の戦争の「権利」の発露としての自然撲滅//顧慮と手心:戦術の諸カテゴリー/環境悪化による損害の限界―戦争目的の限界による/「……そして広い範囲を徹底的に皆伐した」―ペロポネソス戦争の恐怖/意志の限度からくる可能:辛練な最終結果/大地焼却の戦略―ハンニバルの挑戦に対する「大蹂躙者」の解答/第二次ポエニ戦争によるエコロジー的影響/「荒廃状態をつくり上げるところで、彼らはそれを平和と呼ぶ」―ローマの絶滅戦略の帰結/シニカルな自然破壊のさなかの陰惨なる「光明」}
「われわれは大地から内臓をつかみ出す……」 ―採鉱の呪い
{「呪われた黄金欲」―古代の採鉱批判/「母なる大地」への虐待―その報復/「親しみのわかない景観……」―古代の採鉱がもたらした月面風景/歪曲、一面性、誇張? 基本的制限若干/良心のとがめは皆無―重要なのは儲け/「勝ち誇って彼らは自然の崩壊を見つめる」―「残酷な」採鉱方法についてのプリニウス発言/はばかるところなき環境破壊―「高い煙突政策」から制度化された乱掘に至るまで/「自分が掘り出した金のように蒼白で」―坑夫たちの労働条件/深き淵より―シニカルに歩調のそろった人間蔑視と自然破壊}
悪夢ローマ ―帝政時代の大都市の環境問題
{種々さまざまな危険におどされて」―大都市住民の嘆き/風刺詩には何が許されるか―そして歴史的文献としての価値はどの程度か/人々の雑踏、交通渋滞、芋を洗うような不愉快な混雑/「四方八方から私の周りに騒音が響いてくる」―日中の騒がしさ……/……そして夜間の騒音/環境汚染からの別荘への逃避―富裕層にとっての逃げ道/都心志向熱―ならびにその理由/土地投機と暴利家賃―激しい住居市場の異常発展/薄暗い「あばら家」での生活―賃貸集合住宅のマイナス面/犯罪的な倹約の結果としての家屋崩落/欠陥だらけの火災防止―壊滅的大火災に対するシニカルな返答/西暦六四年の大火―そこから得られる教訓/環境汚染―社会情況の変数/ローマ上空の「濁った空気」―スモッグによる蒼白い顔色/高い水準の給水/「どん底の衛生状態」?―論争対現実/下水道と仮設便所―「廃棄物処理」の場所/モロク神の犠牲―大都市ストレスによる病気と死}
輸送目的は殺戮 ―異常な娯楽「産業」の犠牲者としての野獣たち
{屋外円形劇場の「狩猟」―人気のある「遊戯」/大量屠殺―「大仕掛けの動物狩り立て」の歴史から/一二三日間に一一〇〇〇頭「消費さる」―「アニマル・ホロコースト」の数字/ローマの殺戮機構への全世界からの補給/「森のあらゆる恐怖、あらゆる美しさが捕えられる」―文明の名における絶滅/動物総人口の死滅と急激な後退/「至るところに半死の動物の残骸」―恐るべき調達システムにおける恐るべき輸送途上の損害/セルフサービス店としての自然―搾取気質の伝統として}
政治的圧力か、科学的技術の問題か、それとも自然保護か―テヴェレ河制御フロジェクト失敗の背景
{反抗的自然対建築/繁栄による景観破壊/「いつ最後の湖岸は埋め立てられるか……?」/緊急事態の張本人としての生命提供者/大胆な発想の誕生/「ヒアリング(公聴会)」において形成される抵抗/理性の勝利―実際的にもエコロジー的にも}
最後には中毒による破局か? ―「ローマの金属」と言われた鉛
{「恐るべき毒」―ワインの合成保存料たる大理石含有微粉とテレピン油/鉛に汚染されたワイン/「それゆえに鉛管で水を導くのは絶対によくないことだと思われる…」―無視された飲料水汚染の警告/有用で廉価な金属―鉛製の小児用玩具から含鉛化粧品まで/fistulae plumbeae(=鉛管水道)―国民の健康の危険か?/健康阻害―「官能的な享楽欲のつけ」/「貧乏ぎらいの神」―ローマ上層部の災難たる痛風/血液中の鉛の濃度、裕福であればあるほど高い/汎発流行病の鉛中毒:イエス―破局理論:ノー}
「かくして家から家へと共通の災厄が渡り歩く」―古代エコロジー意識発生の動因
{「そのような災厄が広まる……」―ソロンによるエウノミーの詩/崩壊に対する警告―政治的社会的法則性の発見/エコロジー的エウノミー(よき秩序)はどこにあるか?―ソロンの詩を今日化する試み}
原注
訳者あとがき
参考文献
索引