1975年 A5判 P392+索引P21 カバースレ、ヤケ、少汚れ、端少破れ 天時代シミ多 遊び紙少汚れ
“本書は、17世紀末から18世紀において「自然」の観念が宗教、倫理、哲学および政治の各分野にわたってもった重要性を例示したものであり、特にワーズワスにおいて頂点に達した「自然」 の神格化のいくつかの段階の解明に力を注いでいる。
17世紀の科学革命の遺産を引きついだ18世紀は、もう一つの遺産、宗教と科学との調和をはからなければならなかった。 このような思想的風土の中で、神の世俗化と表裏一体をなして「自然」の神格化が行われた。そしてこの「自然」 ということばには人間の「自然」(人間性)も含まれ、それは「人間の自然」の積極的肯定に立脚する理想主義的革命へとつながり、さらにそこから上揚される形で、ロマン派的心情が形成されていった。この過程はイギリスにおいて進行しつつあった産業革命と相まって人間の無限の進歩への確信を生みだしていった。
西欧近代文明、ひいてはそのあとを追ってきた近代日本文明は、こうした楽天主義を基盤としてきた。今日われわれがこの種の文明に大きな挫折感を味わっているとき、本書は近代西欧文明の一つの源流にわれわれを連れもどし、人と 「自然」との関連、「人間の自然」の実体という二つの大きな問題について、原点に立ちもどって考えなおすことを迫っている。この意味で、本書はきわめて現代的な意義をもつといえよう。”(カバー裏紹介文)
目次:
はしがき
訳者序(三田博雄)
第一章 世紀の変わり目
1 自然科学と自然宗教
2 自然法
3 文学理論における「自然」
第二章 創造における神の英知
1 トマス・バーネットの『地球についての神聖な理論』
2 ジョン・レイの『創造における神の英知』
3 デラムの『自然神学』
第三章 宇宙論的保守主義《トーリイズム》
1 何にもあれ存在するものはすべて是なり
2 ソウム・ジェニンズとジョンソン博士
第四章 自然道徳(I) ―シャーフツベリー
1 自然の神格化
2 自然宗教
3 人間は生来社会的なものであること
4 『徳ないしは価値に関する考究』
5 精神の自由な働き
第五章 自然道徳(II) ―ジョウゼフ・バトラー
1 『宗数の類比』
2 道徳家としてのバトラー
第六章 諷刺における「自然」
1 マンデヴィル
2 スウィフトについての覚え書き
第七章 デイヴィッド・ヒューム ―「理性」を斥けた「自然」の擁護者
1 形而上学 ―精神の習慣としての「自然」
2 倫理学 ―心の感情としての道徳
3 宗教観 ―「理性」ではなく「信仰」に基づく宗教
第八章 デイヴィッド・ハートリーと〈自然〉の教育
1 振動の教義
2 道徳的上部構造
第九章 オルバックの『〈自然〉の体系』
第一〇章 ジョウゼフ・プリーストリーとソツィニ主義の月光
1 物質と精神
2 哲学的必然の教義
3 プリーストリーの宗教的見解
4 政治と歴史
第一一章 革命と反動とにおける「自然」
1 ウィリアム・ゴッドウィン
2 エドマンド・バーク
第一二章 ワーズワスにおける「自然」
1 革命への共感 ―不安な心情
2 間違いなく歓びを与えてくれる確かな原理
原注および訳注
訳者あとがき
索引