2000年 新書判 P203 カバー上端僅イタミ 小口僅汚れ
“洋の東西を問わず、人間にとって最も身近な存在であった犬。
犬が唯一の家畜であった縄文時代から、犬狩で追放された平安時代、犬追物がブームになった室町時代、南蛮犬が珍重された戦国時代、「犬公方」まで登場した江戸時代、軍用犬が初めて本格的に組織された近代まで、本書では日本史上の犬にまつわるユニークなエピソードを多数掘り起こす。犬との関係は日本人の自然観をも映し出すという視点から、日本における犬と人間社会との交流を丹念に描き出す一冊。”(カバー袖紹介文)
目次:
はじめに
第一章 日本史への犬の登場
{犬は人類のもっとも古い友/縄文犬の登場/縄文犬はどこからきたのか/狩猟に力を発揮した犬/文献に登場する猟犬}
第二章 白い犬の幻想
{記紀と風土記の白い犬/白犬が鼻から出した白糸/三河の犬頭社と犬尾社/祥瑞になれなかった白い犬/日本犬の毛色は何色か}
第三章 平安京の犬のいる風景
{清少納言と親しかった犬/平安宮廷の犬のいる風景/平安京の掃除人は犬とカラス/平安貴族をこまらせた犬の穢れ/犬を追放する犬狩の行事}
第四章 犬と中世の武家社会
{鎌倉武士の獲物は犬/室町幕府は犬追物ブーム/犬追物では犬は死なない/闘犬が鎌倉幕府の滅亡をはやめた?/北陸の南朝軍が使ったスパイ犬/太田三楽斎がつかった伝令犬/日本での近代的な軍用犬の利用}
第五章 海外からやってきた犬
{古代・中世の渡来犬/南蛮貿易で輸入された洋犬/南蛮犬(唐犬)はいばっていた?/特別あつかいされた狆/狆ブームといくつかの系統}
第六章 鷹狩をめぐる犬たちの明暗
{鷹狩と鷹犬/ある犬飼のみた悪夢/優遇された鷹犬/鷹の餌とされた駄犬/鷹餌用の犬の大量虐殺}
第七章 犬公方と江戸の犬
{将軍綱吉の「生類憐みの令」/「お犬様」をめぐる悲喜劇/江戸の獣医はいい加減/中野に造られた大規模な犬小屋/犬にむかった憎悪}
第八章 犬を食う人、人を食う犬
{日本人の肉食/犬肉も食べられていた/江戸時代にもあった犬食/毛皮や脂の利用/人の死体を「処分」する犬/捨て子・捨て病人も犬の餌食/犬の先祖は肉食獣}
第九章 犬の霊力・呪力・超能力
{犬の人に対する愛情/侮辱的に響く犬という言葉/犬の嗅覚・聴覚・視覚/犬と会話はできるか/犬の信心/魔除けになった犬/犬の字・犬張子・犬神憑}
第十章 狂犬病は犬と人の共通の敵
{狂犬病とは/律令にいう「狂犬」とはなにか/日本での狂犬病の発生/期待できない治療法/村々から排除される犬/「対策は殺すのみ」の悲劇/死にいたる病からの解放}
第十一章 消滅しかけた日本の犬の歴史
{欧米人の観察から/歴史上の町の犬・村の犬/日本犬の代表は狆?/なぜ、カメばかりになったのか/日本犬の血統を守る運動/日本在来犬の保存をめぐって}
あとがき
参考文献