昭和61年 文庫判 P275 帯端少破れ、背ヤケ カバー少ヤケ 小口汚れ 巻頭数ページおよび末尾ページヤケ
“信仰に根ざした生き物たちとの交渉史”(帯文)
“古代人は狐や鳥の鳴き声に予兆を探り、それはまた、天上界の神が動物となって人間に幸福をもたらすという考え方とも通じた。本書は、白鳥、蛇、鹿、鵜、狐、鮭、熊などの野生動物の生態を通して、神と人間と動物の三者が織りなす親和力の世界を克明に描き出したものである。山林の伐採などにより、山野に住む生き物たちとの共存の場を失ってしまった神を畏れぬ現代人への鋭い警鐘をともなう、谷川民俗学の新しい境地を拓いた意欲作。”(カバー裏紹介文)
目次:
学術文庫のためのまえがき
遠野から ―プロローグ
{「自然の摂理」とは?/追われる野獣/神にまつられた狐狼/海神の使者=鮭/動物儀礼と共同幻覚/生活者にとっての動物}
霊界をはばたく使者 ―白鳥
{伝承の中の白鳥/「産土さま」になった白鳥/「白鳥事件」といわれる争い/北から渡来する神霊}
海を照らす神しき光 ―海蛇
{「神光照海」の扁額/竜蛇神をめぐる神事/セグロウミヘビの威厳/家に入った蛇/大和の竜蛇信仰}
海神の娘 ―鮫
{竜宮の姫はだれか?/鮫と寄り添うイルカ/人を食った鮫/鮫に助けられた話/海人=異族の悲話}
もの言う南海の人魚 ―儒艮
{津波を起こす魚=ザン/ジュゴン(ザン)の正体/新城島のザン漁と巻踊り/人魚を食った八百比丘尼}
狩りに騒ぐ太古の血 ―鹿
{狩りの主賓だった鹿/「殉教者」としての鹿/志賀島と鹿トの記憶/鹿衣・鹿杖・鹿笛/伝説の優しさと無残な乱獲}
黄泉への誘い鳥 〈鵜〉
{能登の海鵜/「鵜取部」と鵜の役割/「生と死」と鵜の関係/鵜を利用してきた人間/現代の鵜飼}
不死と再生の象徴 〈蛇〉
{土器と土偶に残された蛇/さまざまな蛇伝説/神と蛇と生殖/「創世記」に似た話の意味}
狩言葉に満ちた世界 〈猪〉
{『後狩詞記』の村へ/椎葉村の猪狩り/猪と神々の間柄/「生類憐みの令」下の猪退治/猟師言葉「ソジシ」の意味}
葛葉の神秘と幻想 〈狐〉
{予兆力を期待された獣/狐と狼との関係/葛葉神社と葛葉伝説/女の血筋と狐憑き/病める現象=狐憑きの問題}
北の異族の匂い 〈鮭〉
{川をのぼる鮭の感動/アイヌの宝=鮭/利権と保護の争い/日常食から正月魚へ}
荒ぶる山の神 〈熊〉
{熊狩りと禁忌/狩りの方法と熊の商品価値/アイヌと熊野関係/怖れられた山の王者}
エピローグ
解説(別役実)