1983年 四六判 P329+索引ほかP11 カバー背から端にかけてヤケ大、端少イタミ 小口汚れ 末尾数ページ開きグセ
“1952年の線文字B解読の成功は、ミュケーナイ人がギリシア人の祖先であったことを実証し、シュリーマンによるトロイア遺蹟発掘にも匹敵する。考古学、古代史の画期的事件となった。それ以来、いくつかの新たな発見がなされ、二十数年に及ぶ線文字B粘土板研究が積み重ねられた結果、従来、断片的な考古学的遺蹟を通してしか知られなかった後期青銅器時代のギリシア人の姿が、いまや彼ら自身の記録にもとづいて本書に生き生きと復元されるに至った。
粘土板文書の内容は、一見したところやりきれないほど退屈な、長々しい名簿、家畜や穀物をはじめとする生産物の記録、王宮の役人が作成した会計簿などでしかない。だがこれらは、まさに真正の記録であるという点にこそ価値があるのだ。なぜなら、そこに詠まれる文字や数字は、考古学者の鋤によって掘り出された、かの見事な財宝を生み出した文明の担い手自身によって記されたものに他ならないからである。
3200年の眠りから覚めたこれら〈無名の書記の手になる文書〉はわれわれに何を語ってくれるか? 故マイクル・ヴェントリスと共に解読に携わり、線文字B研究の第一人者たる著者は、考古学の成果をもふまえつつ、社会構造、農業、青銅工業、織物生産から、宗教、奴隷、人身御供に及ぶミュケーナイ世界の諸相をここに一挙に解明する。また、史料としてのホメーロス叙事詩の信頼性を論じ、さらにはミュケーナイ諸王国滅亡の謎を大胆に推理する。これは最新の成果を盛った、興味尽きない先史時代地球かい世界の物語である。”(カバー裏紹介文)
目次:
まえがき
1 ギリシアのヘラス化
2 文書資料
3 ミュケーナイ世界の地理
4 粘土板に登場する人々
5 社会構造と行政機構
6 宗教
7 農業
8 工芸、工業、交易
9 武器と戦争
10 偽歴史家ホメーロス
11 ミュケーナイ世界の終焉
訳者あとがき
文献
索引