2001年3刷 文庫判 P489 カバー少汚れ、少イタミ 末尾ページ僅剥がし跡
“11世紀から13世紀まで、200年にわたって西欧キリスト教徒が行った近東への軍事遠征―それが十字軍である。ヨーロッパ側の史料と史観に依拠することもっぱらで、ときに「聖戦」の代名詞ともされる、この中世最大の文明衝突の実相は、はたしてどのようなものだったのだろうか。豊富な一次資料を用い、ジャーナリストならではの生き生きとした語り口で、アラブ・イスラム教徒の観点からリアルな歴史を再現して、通念を覆し偏見を正すとともに、今日なお続く抗争と対立からの脱却の途を示唆する反十字軍史。改訳決定版。”(カバー裏紹介文)
目次:
原著者まえがき
序章 千年の対立ここに始まる
{バグダード、一〇九九年八月/エルサレムの掠奪/「亡命は恥にあらず」/観察するアラブ}
【I 侵略(一〇九六〜一一〇〇年)】
1 フランク来たる
{トルコのスルタン、クルジュ・アルスラン/ビザンツとフランク/フランク、ポスポラスを渡る(一〇九六年八月)/フランク、渇きに屈す/スルタンは「待ち伏せ」で快勝したが……/セルジューク帝国の内幕/スルタン対ダニシメンド/フランクの新手の大軍/ニケーアの陥落(一〇九七年六月)/束の間の海洋帝国/、スルタン、ダニシメンドと同盟/ドリュラエウムの合戦(一〇九七年七月) /同盟軍、惨敗
す/フランク、シリアをめざす}
2鎧師の裏切り
{攻めるに難し、アンティオキア/領主ヤギ・シヤーンの決断/シリアの内紛/アレッポとダマスカスの兄弟げんか/食糧危機のフランク/アレッポ軍、潰走す/頼むはモースル。石油の町/モースルのアターベク、カルブーカ/アターベクの出陣/エデッサ、フランクの手に(一〇九八年四月) /鎧師の手引き。アンティオキア陥落す(一〇九八年六月)/シャムスひとり奮戦するも/ダマスカス王の陰謀/モースル軍、戦わずして敗走}
3 マアッラの食人種
{文豪アブール=アラーの故郷/飢えて人肉を食べたのか/フランクになびくシリア。騎士の城/トリポリ、東アラブの宝石/アルカの抵抗/カイロの実力者とビザンツ帝/フランクを利用できるか/一〇九九年五月の宣戦布告/エルサレムの攻防/聖都落つ (一〇九九年七月)。惨劇/ウマルの寛容とフランクの残虐/バグダード、再び一○九九年八月/アッバース朝の光と影/カリフ、衰退の象徴/スルタン兄弟の愚劣な芝居}
【II 占領(一一〇〇〜一一二八年)】
4 トリポリの二千日
{フランクの三主役、相次いで消える/復讐誓うダマスカス王/ボードワンを「犬の川」で待ち伏せ/失敗。ボードワン、エルサレム王となる/フランク、小アジアで三たび壊滅/アラブ世界の腰抜けぶり/歯がゆいエジプト司令官/釈放されたボエモン、ハッラーンを攻める/ムスリム軍、快勝す/奇妙な組み合わせの合戦/敵味方、内紛の花ざかり/フランク、シリアに勢力を確立/フランク、トリポリを攻める/頼むはいずこに/バグダードに直訴したが/不在中のトリポリ陥落(一一○九年七月)/ベイルートもサイダも落つ}
5 ターバンを巻いた抵抗
{バグダードの暴動/アレッポの市場/実力者イブン・アル=ハシャーブ/ダマスカス、フランクと結ぶ/アスカロンの蜂起/ティールの抵抗/混乱するアレッポ/イルガジ、アレッポのあるじに/サルマダの合戦。イルガジ圧勝す/。バラク、ボードワン二世を捕う/バラクの戦死。ティール、ついに落つ/イブン・アル=ハシャーブ、暗殺さる/暗殺教団の教祖ハサン/殺人を武器に/ハサン、シリアに分派をつくる/アル=ハラウィも倒れる/望みなきアラブ世界}
【III 反撃(一一二八〜一一四六年)】
6 陰謀渦巻くダマスカス
{暗殺教団一派を粛清/フランクを破る/暗殺教団の復讐/ザンギーの登場/従来とは別次元の指導者/フランク王女、ザンギーに接近/ボードワン二世の死とフールク/カリフの栄光と悲惨/そのころ、ダマスカスでは……/母がわが子を}
7 蛮族のなかの一貴紳
{ザンギー、初めてフランクと戦う。伝書鳩/ビザンツ帝の出撃。骰子遊び/救世主ザンギー対不死身のウナル/無教養なフランク ―ウサーマの観察(上) /野蛮なフランク ―ウサーマの観察(中)/無知なフランク ―ウサーマの観察(下)/ザンギー、エデッサを回復(一一四四年十二月)/敬称のインフレ/ザンギーの死(一一四六年九月)}
【IV 勝利(一一四六〜一一八七年)】
8 聖王ヌールッディーン
{宣伝機関の創設/酒と音曲を断ち……/エデッサの反乱を粉砕。結婚/フランクの二度目の侵略/ダマスカスの攻防/侵略軍撤退す。ウナルの死/ひたすらの宣伝工作/ダマスカス無血入城/シャイザルの悲劇/ビザンツ帝、フランクを攻める/強盗騎士ルノー・ド・シャティヨン}
9 ナイルめざして
{カイロの政情。宰相シャーワル/アモリーとヌーレッディーン/シールクーフの遠征/シャーワルの背信。シリア対フランク/その第二回戦。シャーワルとアモリー/カリフの宮殿。エジプト=フランク同盟/アレクサンドリアの攻防/その第三回戦。カイロ炎上/シールクーフはついに勝ったが/サラディン、エジプトの宰相に/ファーティマ朝の滅亡/深まる主君との不和/ヌールッディーンの死}
10 サラディンの涙
{中東情勢の地殻変動/ヌールッディーンとの違い/ダマスカスへの挑戦状/アレッポ、暗殺教団に頼る/アレッポ、開城す。フランクの分裂/戦争と平和と/悪役ルノーの再登場/サラディン、ついに立つ(一一八七年四月)/罠を仕掛ける/戦機は熟す/ヒッティーンの会戦(七月四日) /勝利。ルノーを処刑/フランクの諸都市を回復/エルサレムを囲む/その前夜/聖地解放(十月二日) /聖地でひれ伏す幸福}
【IV 猶予(一一八七〜一二四四年)】
11 両雄、相見えず
{サラディン、判断を誤る/難攻不落のティール。ギーの背信/ドイツ皇帝フリードリヒ一世/アッカの攻防/イギリス王リチャード一世/アッカ落つ(一一九一年七月)/サラディンの暗い日々/リチャードの奇妙な提案/いら立つリチャード/平和条約調印さる(一一九二年九月)/サラディンの死(一一九三年三月)}
12 「公正《アル・アーディル》」と「完全《アル・カーミル》」の時代
{アル=アーディルの登場/そのころフランクは……/コンスタンティノープル略奪(一一〇四年四月)/エジプトを攻める/ダミエッタの攻防/アル=カーミル、フランクを破る(一二二一年八月)/フリードリヒ二世の登場/顔を立てるための駆け引き/聖地のフリードリヒ (一二二九年二月)/アル=ナーシルの抵抗}
【追放(一二四四〜一二九一年)】
13 モンゴルの鞭
{歴史家の悲嘆。草原の騎士たち/フランス王ルイのエジプト侵攻/マンスーラの攻防(一二五○年二月) /ルイ、捕虜に。アイユーブ朝滅亡/女性スルタンの出現。ルイ、釈放さる/アッバース朝の滅亡(一二五八年二月)/荒らされるシリア/ある巷談的事件/アイン・ジャールート(一二六○年九月)}
14 神よ、二度と彼らに足を踏み入れざらしめんことを
{奴隷《マムルーク》王朝のクーデタ/バイバルス、スルタンに(一二六〇年十月)/アルメニア、アンティオキア壊滅す/バイバルスの業績/現実主義者カラーウーン/西へ呼びかけるモンゴル/トリポリの虐殺(一二八九年四月)/対アッカ融和策/西洋の無頼漢/アッカ王国消滅す(一二九一年六月)/追放の完了}
【終章 アラブのコンプレクス】
{衰退に向かうアラブ/フランクの法制と人権/「西」は「東」を学んだが……/十字軍が残した傷跡}
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原注および出典・参考書
関連年表
訳者あとがき