1985年 四六判 P375 帯少スレ カバー背ヤケ、上端僅イタミ 小口少ヤケ 天少シミ
“人間の学としての本草学
植物・動物・鉱物などを実地に踏査し、その成分をたずね、文献を渉猟して系譜をさだめるなど、〈百科全書派〉としても活躍した、日本のナチュラリストたち。 ―科学としての学問と、生活としての技術を一体として展開させた本草学は、人間が自然の一部であることを忘れた現代と現代の学問に、ラディカルな問題を提起する。”(帯文)
本草書、事典類の記述を多く具体例として引き、各書の項目・観点・方言の取扱い、また関連する当時の出来事なども検討しつつ、近世日本における本草学の継承・発展の歩みについて考察する。
目次:
本草学とは何か ―序にかえて
【本草学の起源と展開】
本草学という科学
{江戸の自然誌/本草学とはなにか/名物の学と中・日の本草比較/日本の本草学の歩み}
『本草綱目』の思想
{李時珍と本草学/李時珍という人物}
林羅山と『多識編』
{『多識編』の書誌/『多識編』の世界/『本朝食鑑』と食物生活誌}
日本本草学の樹立
{貝原益軒の方法/益軒と方言の観察/益軒と民俗の学}
国益と薬品・物産会
{学芸復興と人材発掘/平賀源内と批判精神}
草木の〈活姓譜〉
{松岡玄達と『用薬須知』/飢饉と本草学 }
紅毛本草書と植物分類法
{江戸の蘭学事始め/植物学者ツュンベリーの来日}
【蘭山と本草学の形成】
本草学から博物学へ
{小野蘭山と誓盟状/蘭山と本草学の形成/『花彙』の世界}
蘭山の研究・採薬と学統
{講義録と採薬旅行/蘭山と私生活}
木内石亭と考古学
{木内石亭と『雲根志』}
蘭山の仕官と医学館
{国家と個人と研究条件/真を識ること}
『本草綱目啓蒙』の世界
{『本草綱目啓蒙』の刊行事情/〈啓蒙〉の意味}
石と木の世界を観る
{ムラサキズイセウ・コガネの産地/石鹸とマテガラ}
樹木・草花を考える
{柿と白頭翁/植物と豊かな方言}
昆虫の生態と方言の世界
{テウ・トンボ・ヤゴ(ヤマメ)の観察/アメンボウ・ミズクモ・カタツムリの方言}
成長魚とその命名
{魚名調査の源/カジカ・カイツブリ・カワセミの方言/方言・民俗学の原点}
珍鳥、珍獣と観場《みせもの》
{象・薬水漬・孔雀茶屋}
塩池・染料・馬鈴薯
{本草を足でさぐる}
科学と民俗・習俗の座標
{カマイタチ・カッパ・イヌガミの伝承}
民俗学・生活誌の原点
{小児の遊び・雁風呂}
蘭山学の本質
{顕微鏡と親験目睹/蘭山とその最後/『啓蒙』以後}
【畔田翠山の時代と名物学】
幕末の本草学と名物学
{曽槃と本草学/共時的と通時的考察/翠山と『古名録』の発見/翠山と採薬}
『古名録』の出版事情
{〈緒言〉と出版事情/『古名録』の構造/博物学語彙集の成立}
堅香子《カタクリ》と古名の考証
{古典・写本・考証/由吉(雪)の考証を読む/燃水・柿の木の文字・古太万・アマノジャクの考証/久岐(納豆)・毛知比の考証}
『古名録』と翠山学
{文献の海・考証の冴え/翠山とフィールド・ワーク}
おわりに ―本草学と植物学
跋