2008年19刷 P362
“「憑く」という語の本来の意味は、事物としてのものにもともと内在する精霊や、異界の神霊などが、別の事物としてのものに乗り移ることを意味していた。本書は、こうした憑依現象を手懸りにして、狐憑き、犬神憑き、山姥、式神、護法、付喪神など、人間のもつ邪悪な精神領域へと踏み込み、憑依という宗教現象の概念と行為の体系を介して、日本人の闇の歴史の中にうごめく情念の世界を明らかにした好著。”(カバー裏紹介文)
目次:
「学術文庫」版まえがき
はしがき(原本)
一 「憑きもの」と民俗社会―聖痕《スティグマ》としての家筋と富の移動―
{1 はじめに/2 民俗学的研究の若干の問題点/3 「つき」の基礎的概念/4 「つき」と「憑依」/5 聖痕としてみた「憑きもの」/6 聖性(異常性)の形象化としての「憑きもの」/7 「憑きもの筋」と「限定された富」/8 総括と今後の問題}
二 説明体系としての「憑きもの」―病気・家の盛衰・民間宗教者―
{1 はじめに/2 高知県物部村の事例/3 説明体系としての信仰 (1)病気の説明体系と憑霊 (2)家の盛衰と神霊 (3)民間の宗教的職能者とその使役霊/4 まとめ}
三 《呪詛》あるいは妖術と邪術―「いざなぎ流」の因縁調伏・生霊憑き・犬神憑き―
{1 はじめ/2 「障り」の病/3 因縁調伏/4 生霊憑き/5 犬神憑き(四足憑き)/6 式王子と式法/7 若干の考察とまとめ}
四 式神と呪い―いざなぎ流陰陽道と古代陰陽道―
{1 はじめに/2 土佐のいざなぎ流陰陽道/3 「呪詛」のための祭文と儀礼/4 いざなぎ流の「式神」/5 呪禁道と陰陽道の伝来/6 陰陽師の活躍/7 陰陽道の「呪い」と「式神」}
五 護法信仰論覚書―治療儀礼における「物怪」と「護法」―
{1 はじめに/2 『枕草子』からの事例/3 調伏儀礼/4 「護法」―験者の呪力の形象/5 憑霊としての「物怪」と「護法」/6 「憑坐《よりまし》」と「夢」}
六 山姥をめぐって―新しい妖怪論に向けて―
{1 柳田国男の妖怪論/2 妖怪―祀られぬ神々/3 《神》と《鬼》/4 土佐の「山女郎」/5 「山女郎」の両義性/6 昔話のなかの「山姥」/7 今後の課題}
七 熊野の本地―呪詛の構造的意味―
{1 「熊野の本地」諸本について/2 呪詛・占い・殺害/3 陰謀の構造的意味/4 「うわなり打ち」の視点}
八 器物の妖怪―付喪神をめぐって―
{1 怨霊・河童・付喪神/2 器物の精の妖怪化/3 御伽草子『付喪神記』/4 中世における“もの”と“人間”}
九 収録論文解題―あとがきに代えて―
解説(佐々木宏幹)
索引