2016年 四六判 P357
“マキアヴェッリ、スピノザ、ディドロなど、西欧近代には、「永遠の人間観」にもとづいて既存の正統思想を批判し、時代を超える思考のグローバル化を試みたために、「異端」として排除されてきた思想家は少なくない。本書は西欧近代が誕生して以来500年のあいだに現れたオッカムからランゲに至る哲学、政治、経済、社会思想を環境に対する人間精神の果敢な挑戦としてとりあげ、現代に生きるわれわれに発想の転換を迫る。”(カバー裏紹介文)
目次:
はじめに
第1章 永遠の相の下に
{ギリシア人は神話を信じたか?/比較と差別/強力なのは身体/人間の頭のなか/想像力は欲望である/コペルニクス的転回/想像力の作用主/自由と主体の結びつき/存在と本質/人間の本質/必要は発明の母/進歩と自由}
第2章 宗教的思考からの人間精神の解放
1 オッカムの生涯と神学論争
{薔薇は一般名詞/時代が待っていた人物/オッカムの剃刀/理性と信仰の分離/異端嫌疑/代置理論/代置の危険な罠/唯名論的聖餐論/司式者と奇蹟の多発/正統教義における聖餐論/オッカムの聖餐解釈/清貧論争/ドルチノ派異端/千年王国の実現/オッカムの破門/宗教改革の先駆者/晩年のオッカム}
2 オッカムの教会制度改革構想
{信仰に至る理性の道/信仰に至る聖書の道/信仰に至る最後の道/ローマ法王も無謬ではない/法王権力の限定/信仰におけるマルチチュード}
3 パドヴァのマルシリウスと帝権主義
{ウィリアムの回想/時代が待っていたもうひとりの人物/ルートヴィヒの宮廷顧問になるまで/驚嘆すべき著作/マルシリウスの演出/マルシリウスとルートヴィヒ}
4 『平和の擁護者』について
{統治体の動力因/人間の法/聖書による教会論/マルシリウス政治思想の特徴}
3章 異端の国家観の系譜 ―マキアヴェッリからスピノザへ
1 政治学の宗教からの自立 {統治者たちが愛読した『君主論』/密かなる政治的計画/宗教改革の先駆者/模範としてのローマ国家}
2 マルチチュード概念と国家契約説の否定
{少数者による多数者の支配/マキアヴェッリの国家統治論}
3 『神学=政治論』におけるスピノザの国家観
{自然権としての思考の自由/マルチチュードの力を実現する/「舌」の自由の確立/信仰の自由と真の宗教/永遠の人間本性と自由}
4 『国家論』に見るオランダ政治
{『国家論』執筆の動機/戦乱のなかの謎の行動}
5 オランダ共和制の瓦解とマルチチュード論
{貴族国家オランダ/オランダ共和制崩壊の原因}
第4章 植民地グローバリゼーション時代の世界史
1 『両インド史』とレーナル
{啓蒙末期のベストセラー/天才的編集者レーナル/『両インド史』第三版の刊行と出版弾圧/レーナルの亡命と帰還}
2 『両インド史』とディドロの寄与
{広大な地域に及ぶ世界史的叙述/『百科全書』的テーマ/ディドロの叙述の魅力/ディドロの自然主義的人類学}
3 ディドロは『両インド史』をどう書いたか
{歴史と主体/社会変革への呼びかけ}
4 ディドロの反植民地主義と奴隷解放論
{植民に関するディドロの原理/ヨーロッパ・グローバリゼーションの罪悪/植民地主義の告発/奴隷貿易廃止論}
5 新しいスパルタクスをめぐるランゲとディドロ
{白いスパルタクス/アンシアン・レジームの病根/革命的宣言}
第5章 蘇るランゲ
1 忘れられた天才的社会理論家
{反啓蒙のジャーナリスト/ランゲとマルクス/自由と社会は両立しない/社会が先か、奴隷制が先か/狩猟社会の食料危機/生きることはパンを食べること/社会の発展と自由の主張/モンテスキュー批判/奴隷制廃止の原因/東洋的専制の擁護}
2 ランゲの社会観
{真に自由な状態とはなにか/自由の喪失と社会状態=奴隷状態/社会の根本原理/過酷な競争社会}
3 近代の奴隷制 {法律の制定/奴隷はなにを持っているか/近代の奴隷制の特徴/マルチチュードの叛乱権}
第6章 思考する「力」に関する考察
{一元論を語る勇気/カント二元論の謎とき/欲望一元論への恐れ/真理と「舌」/真理は力である/勇気は相対的なもの/勇気の中身/常識を打破する勇気/恐怖はどこから?}
おわりに
注
索引