1993年 四六判 ソフトカバー P160 ビニールカバー付 表紙僅汚れ 天および扉ページ端少時代シミ
海外詩文庫3
“近代は相反し相矛盾するさまざまな思考や感情が共存する時代であるが、ボードレールはこの解体と分裂の相に虚心におのれを開き、それをあるがままに受け入れた。そしてこの解体と分裂そのものを核としながら、きわめて意識的な方法によって、精妙で堅固な詩的世界を築きあげた。そこでは神と悪魔が、憂鬱と理想が、意識と官能が、倦怠と陶酔が、時には役割を交換しながら複雑にからみあい、近代の人間の本質を奥深いところから照らし出している。その後の文学や思想の展開は彼の仕事を抜きにしては考えられないのだ。
本書には、ボードレールの詩的世界を形作る多種多様な要素に出来るかぎり触れうるように配慮しながら、『悪の華』からの詩篇55篇(粟津則雄訳)及び『パリの憂鬱』からの詩篇21篇を収録した。イギリスの詩人・劇作家T.S.エリオット、フランスの現代詩人ボンヌフォア、わが国の詩人安藤次男などのボードレール論は、それぞれ独特の視点からボードレールの深部に入りこんでいるが、同時に彼を外から眺める視点が固有の表情を作って、これはわれわれ自身がボードレールに近付こうとする場合実り多い刺激となるだろう。”(裏表紙紹介文)
目次:
【〈悪の華〉より】
読者に/祝福/あほう鳥/高翔/万物照応/燈台/敵/人と海/美への讃歌/異国の薫り/髪/踊る蛇/深キトコロヨリ叫ビヌ/猫/露台/功徳/告白/夕の諧調/猫/美しい船/旗への誘い/取りかえしのつかぬもの/語らい/秋の歌/音楽/陽気な死人/ひび割れた鐘/憂愁/憂愁/憂愁/憂愁/強迫観念/虚無の味/自分自身を罰する者/大時計/七人の老人/ちっぽけな老婆たち/盲人たち/行きずりの女に/たそがれ/霧と雨/パリの夢/朝の薄明/人殺しの酒/シテールへの旅/地獄に堕ちた女たち/聖ペテロの否認/アベルとカイン/魔王への連禱/旅
悪の華・註
【〈禁断詩篇〉より】
忘却の河
【〈新・悪の華〉より】
沈思/深淵
【〈パリの憂鬱〉より】
芸術家の告白の祈り/二重の部屋/人はみな幻想《シメール》を身に負う/午前一時に/群衆/旅への誘い/たそがれ/すでに!/窓
【〈パリの憂鬱〉より】
異邦人/老婆の絶望/無能なガラス屋/時計/髪の中の半球/綱/バッコスの杖/酔いたまえ/描きたい欲望/港/マドモワゼル・ビストゥリ/ANY WHERE OUT OF THE WORLD
【詩人論・作品論】
ボオドレエル(T・S・エリオット 訳:吉田健一)
『悪の華』(イーヴ・ボンヌフォア 訳:平井照敏)
詩その沈黙と雄弁(安藤次男)
【解説・年譜】
ボードレールの近代性(粟津則雄)
年譜
あとがき(粟津則雄)