2010年 文庫判 P317 ページ僅イタミ、数ヶ所にごく薄く鉛筆引き線消し跡(おもに筆圧痕)
“不浄なるものの力
心の深層に潜むおそれと再生の物語”(帯文)
“被差別部落の白山信仰、血穢の性差別、非常民の世界、民俗概念としてのケガレ。これまで日本民俗学が避けてきた問題、ケガレと差別の底に潜むものは何か。ハレ・ケ・ケガレの民間信仰の意識構造のなかで、ケガレが不浄なるものへと変化する過程を究明し、経血にまつわる女性差別の要因である血穢の虚構をあばく。また、死穢というもっとも大きな不浄観はどのような時空間で発生するのかなど、その基底にある民俗儀礼の奥底を明らかにする。ケガレとはたんなる汚穢ではなく、ハレを喚起する力なのだ。日本民俗の深層に根付いている不浄なる観念と差別の問題を考察した先駆的名著。”(カバー裏紹介文)
目次:
I 民俗研究と被差別部落
一 民俗学的視点
二 “ケガレ”の設定
三 食肉と米
四 皮剥ぎ
五 民話のなかの差別意識 {一 予言/二 部落差別/三 血穢}
II 差別の生活意識
一 非・常民の信仰 {一 柳田國男の常民観/二 白山の視点}
二 力の信仰と被差別 {一 力持のフォークロア/二 女性と怪力/三 力と信仰}
三 仏事と神事 {一 仏教忌避の心情/二 仏事的盆行事の民俗化/三 神と仏のあいまいさ}
III 性差別の原理
一 神霊に関わる男と女
二 血穢の民俗
三 成女の期待
四 熊野の巫女
五 血盆経
六 血穢の否定
七 血の霊力 {一 経血に対する両義的な見方/二 聖なる血と穢れた血/三 女人禁制の否定}
IV シラとケガレ
一 六月朔日の雪と白山 {一 富士塚と白雪/二 シラヤマの白/三 「長吏」の由来}
二 白と黒 {一 河原巻物と「長吏」/二 喪服のフォークロア/三 「白と黒」の不浄分化/四 白の中の黒}
三 シラとスジ {一 「シラ」=白不浄の世界/二 「シラ」から「スジ」へ/三 霊としてのスティグマ}
V ケガレの民俗文化史
一 民俗概念としてのケガレ {一 ケガレの必然性/二 ケガレのとらえ方/三 ケガレの力/四 「エンガチョ」考}
二 穢気=ケガレの発生 {一 神事の清浄性/二 腐敗と穢気不浄/三 出産・出血とケガレの発生}
三 祓え=ハラエの構造 {一 大祓と延命長寿/二 祓えの呪ないと具}
四 ケガレ・祓え・ハレ {一 災厄除去と招運の祓え/二 ケのトラエ方}
五 呪ない儀礼とケガレ {一 呪うと呪なう/二 弘法大師の呪ない/三 雨乞いと供犠/四 天神=雷神の祭祀/五 民間巫者と陰陽道/六 巫者とケガレ}
VI 今後の課題
結語
初出
解説 民俗学が差別と対峙するとき(赤坂憲雄)