1997年初版 文庫版 P450 カバー少イタミ、裏および袖折れ跡 裏表紙折れ跡 小口僅汚れ
“コレラ、ハレー彗星、千里眼、毒婦お伝……明治から昭和へ、激動の日本に生まれては消えた噂、デマ、迷信。人々の欲望や不安をのせて広まり、時には凄惨な事件までひき起こした様々な噂の驚くべき正体とは。情報機器が発達した今日においても依然として事実と噂の境目が曖昧な状況を踏まえて、噂を生み出す〈時代の仕掛け〉を問い直し、あざやかに近代日本を透視した庶民精神史。サントリー学芸賞受賞。”(カバー裏紹介文)
目次:
学術文庫版まえがき
I
兎、虎烈刺、絹布そして唄
{ふんどし一つにて往来すべからず/豚ブーム、兎投機/うさわが暴動を呼ぶ/血税一揆の伝播/コレラ一揆と対策/布達の漢語と村のことば/管理政策下の「絹布の法被」/西郷星あらわれる}
毒婦たちの栄光
{鳥追お松と夜嵐お絹/実録高橋お伝/改心劇は大入り/毒婦と貴婦人}
鹿鳴館と任侠
{伊藤博文の艶聞/鹿鳴館とスキャンダル/清水の次郎長伝の成立}
世論と壮士
{兆民の壮士論/日比谷焼き打ち事件/消えていく非凡人/都市の群集の誕生}
II
妖怪学と失念術
{自省の能とうわさ/神田駿河台に稲荷あらわる/科学教育と新しい「迷信」/記憶術の流行}
超能力の発見―千里眼事件
{ハレー彗星騒動/千里眼事件/催眠術の流行とX線発見の衝撃/好奇心の増大/千里眼事件の波及}
芸術か、スキャンダルか
{芸術家伝説/裸体画は本邦の風俗に害ありやいなや/岡倉天心とスキャンダル/「芸術家」像の誕生/スキャンダルと芸術家/民芸論の陥穽}
III
コラムの誕生と消滅―「茶話」の時代
{コラムニストのはしり/成金の時代/功名心にかられる人々/モボ・モガの時代}
天譴、自警団、この際やっつけろ
{朝鮮人襲撃の流言/大杉栄をめぐる流言/天譴論の流行/自警団の成立/自警団前史とその後/追いつめる日本人、追いつめられる日本人}
英雄生存伝説と日本起源論異説
{英雄不死伝説/義経、ジンギスカンとなる/日本人の起源はユダヤにあり/大日本帝国貴種流離譚/日本人起源論の流れと帰結}
VI
“清潔な帝国”下の『日乗』―荷風と昭和初期
{窃視者の眼と自己演出/奢侈驕慢の風潮/新元号スクープ事件と不敬罪/不況の世相とうわさ/標語と流行語の氾濫/「件」の出現、戦のし頃/「笑の王国」と「地獄」
デマと統制―木炭もない 石炭もない―
{軍部頽廃へのうわさ/物不足と軍、役人への怨嗟/海戦への反応/厭戦ムードと不穏言動/ナチス政策の模倣とその破綻}
“清潔な帝国”と敗戦
{空襲下のうわさ/敗戦のうわさ/猟奇性を帯びるうわさ/敗戦直後の軍人の行動/“清潔な帝国”の裏の頽廃/英雄視される荷風}
V
“地”のうわさ、海の記憶
{穴守稲荷のうわさ、土地の特異性/公害の原点という話/進駐軍の住民退去命令}
参考文献
原本あとがき