1988年 四六判 ソフトカバー P160 ビニールカバー・帯付
“短歌で一つのこころざしをひらいたかにみえた高祖保が、詩のとりことなり、ついに、そこから帰ることがなかったのは、すべての詩的革新が抒情詩という水のなかで十分に果たされるものであるという天与のおしえをかぎとっていたからだろう。彼はみずからの抒情詩を、言語の、思想の器物として浪費することなく、そのひろさに心をあわせる人であった。その詩の形式は変転をみせなかった。抒情詩のひめられた可能性の、メディアそのものであろうとした。 荒川洋治”(表紙裏紹介文)
目次:
【詩集〈希臘十字〉全篇】
Kalokagathia/希臘十字/海燕と年/自家中毒/Lethe/浄化/昇華/唄の端くれ/しばらくは払暁戦/硝子建築 /共和国風俗/等閑の箱/牧歌的/雪/湖畔集
【詩集〈禽のゐる五分間写生〉から】
孟春/禽ふたつ配する五分間写生/浜の植木市/夏/湖のcahierから
【詩集〈雪〉全篇】
乖離 /みづうみ/Sine qua non/哀訴/山下町の夜/弾く人のゐない夜/雪もよひ/雪/てがるな緑化季/つばくろ/去年の雪いづこ/茅蜩記/野/鶯/すでに年が老けて…/八十八夜/年の徂徠/海へ/からす/やつてくる男/独白/淡彩/「孤キョウ《竹かんむりの下に工+おおざと》わけ入る山」/七月/六月/樹の下/冬蝶/草店月初冷/くれなゐ/呂律/「落葉哀蟬曲」を読む人/和蘭陀石竹のかげに
【詩集〈夜のひきあけ〉から】
天徠/弾丸/雪/巨木/ア《口+阿》吽の行者/神/田園に囁くもの
【未刊詩集〈独楽〉全篇】
征旅/夢に白鶏を見る/独楽/半球の距離/元朝/大歳 /壁書/寒蟲/路上偶成/家庭/旅の手帳/秋の人/晩夏/小さな時/ふらここ/龍のひげ/曇日/忠告/夏夜/経過/乖離/爪/燕/退院
【未刊詩篇】
春のながめ/わがエピグラム/静浦二章/窓/エピグラムふうに/公孫樹のある家で噴水と孤燈のある庭を象る/青柳寺晩春図/軽井沢詩集/片隅のながめ/秋へおちる海/軽井沢にて/年齢/春の田園/田園秋色/庭/浅春/登山家のこと/病牀詩集/年あゆむ
【評論・エッセイ】
花の季節/松高風有一声秋/二つの散文/かみなり/歌の山脈とそして詩の金鉱と/胡桃の樹の下にて/蒲原有明と日本象徴詩/『邪宗門』と『思ひ出』の性格乖離/白秋の『桐の花』管見
【年譜】
【研究】
序詩 天童哀悼(堀口大學)/悲歌(岩佐東一郎)/高祖保を憶ふ(岩佐東一郎)/高祖保の想ひ出(木俣修)/『希臘十字』への書翰(村野四郎)
解説 「愛された」抒情詩(荒川洋治)