199年11刷 A5変型判(ページ部分13.0×21.0) カバー端僅イタミ 小口僅汚れ
網野善彦、上野千鶴子、宮田登の三名による討論の記録。
“日本的権力とは何か?歴史学・民俗学・社会学の視角から民族史の深部を探る白熱の討論。”(カバー袖紹介文)
“天皇制とは何か?それは〈日本〉というものの深層を問う時不可避に浮かび上がってくる問題である。なぜそれは現在に到るまで存続しているのか。
果たしてそこに「一貫性」はあるのか。社会のどの層かどのようなしかたでそれを支えてきたのか。
そして他のさまざまな〈王権〉と比較したときそこにどのような共通性・特殊性が見えるのか。
記紀神話のイエオロギー分析、中世非農民との特殊な結び付き、幕府という武士政権との関係、〈聖〉〈俗〉〈賤〉のダイナミズムの中での変容、民俗コードによる受容、そして近代資本主義における位置などの問題をめぐって、歴史学、民俗学、構造主義社会学の最新の成果を踏まえ、社会構造・民衆の世界観の変遷を探りつつ、日本精神史の深部を探る白熱の討論。”(カバー裏側袖紹介文)
目次:
第一章 古代王権のコスモロジー―王権と[外部]
〈ヨソモノ〉としての天皇/〈内〉と〈外〉の弁証法/古代王権の失敗/天皇制の二つの問題/〈独身の皇女〉と女の流れ/女の贈与による地方王権の服属/天皇制を支える日本の柱―農業民と非農業民/〈聖〉と〈賤〉の結び付き/供物のコンストラクション/〈海〉と〈陸〉の媒介者/〈海〉と〈陸〉と〈山〉/贄の貢納と軍事的服属/〈王殺し〉と大嘗祭/サクリファイスとサクリファイアー
第二章 後醍醐の新政と民族史的転換―[聖]と[賤]の変化
後醍醐の新政と非農業民/「民族史的」転換/王権の〈外部〉化/後醍醐王権と古代王権の異質性/通貨と外部の独占/立川流と国家仏教/〈漂泊する王〉と非・常民の結び付き/〈聖〉と〈賤〉の変化/葬送儀礼と被差別民/鎌倉末期の「聖」/天皇と祓の機能/〈聖〉と〈賤〉の文化/遊女と天皇/テクノロジーと聖なるもの/テクノロジーは上部構造か/アウトサイダーと貨幣
第三章 王権の変質―天皇制はいかにして存続したか
失敗による完成―王権イデオロギーの内面化/天皇制はなぜつぶれなかったか/天皇制にアイデンティティーはあるか/「失敗」と一貫性/二重王権説/儀礼と支配/律令制は輸入したもの/法皇と天皇/ヒメヒコ制/後醍醐と阿野廉子/ダイアーキーの終焉と王権の自立/「夜の天皇、昼の天皇」/「女の力」と構造
第四章 菌性社会における天皇の位置―フォークロアの中の天皇
東西二王権論/東国王権の継承/徳川政権と天皇制/家職としての天皇/江戸期フォークロアの中の天皇/「長者」と共同体の自治/権威の裏づけとしての廃王/貴種流離伝説/天皇劇、厄祓い/江戸期の大嘗祭
第五章 江戸王権の支配構造―階級社会と[礼]の構造
階級間乖離とディスコースの共有/表と裏の使い分け/複数原理の共存/「アジア的専制」/江戸王権は世俗権力か/〈礼〉の秩序/「草の根天皇制」/「二重の公」/〈武威〉の権力/神君家康と東国祭司王権/江戸と「資本主義」/「江戸絶対主義」説
第六章 現代の民俗コードと天皇制
明治の天皇制ルネサンス/祭司権の分掌による天皇制の終焉/元号と位階は権力である/常民の視点と支配の視点/民俗コードによる歴史の読み換え/民俗コードの変化/「国際的契機」/現代の民俗コード/「敵」の拡散/女と妖怪と日和見/新人類と天皇制/オカルトと宗教/思想の問題として
付:天皇家系図・時代区分略年表