2011年　四六判　P245　帯付　カバー上端僅イタミ

“いま若者たちに靴づくりブームが到来している・・・…何故？
龍馬がブーツを履いて約一五〇年、日本人はいかに靴と格闘し馴染んできたか。靴からみる日本の近現代と靴づくりの魅力を楽しむ。”（帯文）

製靴会社を経営するかたわら、日本の靴産業史を研究してきた稲川實氏の談話を下敷きに、近代以降を中心とした製靴業者と歴史とその周辺の社会情勢の変化、靴職人の仕事の実際などを辿る。
後半部では世界の靴に関する大まかな歴史や、稲川氏自身のあゆみ、現在の靴職人の例などを紹介。

目次：
はじめに

第一章　日本人と靴
　日本の伝承は草鞋と草履が優勢／靴ことはじめ／「龍馬のブーツ」の秘密／靴への反発と自慢／明治天皇と靴／「岩倉使節団」靴工場を視察／靴は高値の花／森林太郎がオーダーした「衛生靴」／左右同型の靴／女性たちも悩まされた靴／きう靴／靴脱ぎ文化と家の聖と俗／玄関がない台湾の家

第二章　日本人による靴づくり
　歴史の概要／西村勝三による創業／弾左衛門（弾直樹）／そのほかの製靴会社／和歌山藩の授産産業／ジョナサン・ゴーブル／トモエヤの「マッキンレー靴」／時代の最先端をゆく職人／靴の通信販売／代表的な産地／山の手（城南地区）／大阪・西濱／近江八幡／盛岡市／軍需産業としての製靴／合併、軍への職人引きぬき／軍靴の仕様／機械化への道のり／分業化へ／戦争への道／製靴産業の戦後／はき捨ての時代へ／地下足袋からはじまった日本のスニーカー、スポーツシューズ、ケミカルシューズ／地下足袋から発展した神戸のケミカルシューズ

第三章　世界史からみた靴づくりの歴史
　最初のはきものと革／時代を通じて最悪な仕事／古代エジプトのサンダル職人／靴づくりの基礎技術／「製甲師」と「底付け師」／靴職人の聖人クリスピヌスとクリスピニアヌス／同職組合の形成／同職組合への入会と遍歴／さまよえるユダヤ人／もう一つの民衆靴―木靴づくり／オランダの木靴づくり／フランスの木靴―広がる音と感覚の世界／纏足と女性たち／纏足の靴―靴につづられた女性たちの文化／日陰の存在からファッションの主役へ／ないものとされていた女性の足／現代の靴づくりの確立

第四章　稲川實の人生史
　ここで、浅草／浅草の歴史と地理／生まれてから靴との関わりまで／第六陸軍技術研究所に配属／東京大空襲、そして終戦／叔母・宮本きんさんに誘われて銀座へ／再び稲川さんのお話／会社設立から靴の資料収集へ／製靴業界の構造的変化と倒産、その後

第五章　靴づくり、人づくり
　東京都立城東職業能力開発センター台頭分校／「浅草ものづくり工房」の試み／安仁屋隆宏さんの体験／手縫いか機械か、そして浅草／一人で靴職人志向の「落とし穴」／山本詠子さんの話／「あとりえ西濱」の試み／靴職人たちの仕事と「遊び」／機械靴の製造現場で／新しい靴づくり、新しい靴職人に向かって

主要参考文献／インターネット／靴産業関連施設・団体

おわりに