平成5年　Ａ５判　P328　帯少汚れ、背破れ、少ヤケ、少イタミ　カバー背少ヤケ、端少イタミ　表紙端少縛り跡

“特異作家と称される秋成の病跡の分析とその芸術の秘密をここに解き明かす”（帯文）

“『型破り』な秋成研究　―高木市之助　序文より
……独り本書だけは三つの視点、1．秋成と瑚《王＋蓮》の関連における内部的人間性、2.テンカンとデーモンの関連における精神病理、3.自己処罪と自己処理の関連における異常心理を設定し、三者の視点を相関移動させることによって“段階的内施的に”作品作家の定位を追求して行こうとするものであって、著者のこのような態度と方法こそ私なりにいって、 型破りに外ならないのである。”（帯裏紹介文）

目次：
序文

（一）　秋成と瑚《王＋連》
　｛一　「自伝」と回想／二　「秋山記」・鴛央行／三　「去年の枝折」「鶉の屋」・宣長と秋成／四　「岩橋の記」・出生の秘密／五　「露分衣」・嵯峨野の秋月／六　「箕尾行」・箕尾山の紅葉／七　「鶉居」・人生凋落の秋／八　呉春宛書簡・天資の廃人／九　「夏野の露」・瑚《王＋連》の遺稿／十　秋の調べに秋の声・芦庵と秋成／十一　瑚《王＋連》の死・芦庵の慰め／十二　〈身を捨てん海川やいづこ〉投身の衝動／十三　「よもつ文」・瑚《王＋連》の三周忌／十四　「楢の杣」と実報院宛書簡／十五　「献神和歌帖」「北野賀茂に詣づる記」／十六　「藤簍冊子」・垢面短鬚の翁／十七　「茶瘕酔言」「秋の雲」「茶神の物語」

（二）癲癇とデーモン
　｛一　文芸の秘密とデーモン／二　痘瘡と癲癇と本草学／三　秋成の残遺性テンカン症／四　病歴と病跡誌／五　病跡学的視点と作品分析／六　自己分裂と離人症―「御嶽精進」明和六年八月、三六歳の回想―／七　既知体験の幻視と自己幻視　―「ぬば玉の巻」安永八年十月、四六歳―／八　ヒステリー症性発作とテンカン症性発作―「秋山記」安永八年十月、四六歳―／九　既知体験の同時・重層的幻視―「去年の枝折」安永九年十月、四七歳―／十　思考化声と思考化像―「癇癖談」寛政三年一月、五八歲―／十一　メタモルフォジスの論理―「古寺の秋」寛政十年七月、六五歳―／十二　入眠時幻覚とシャーマニズム　―「よつ文」寛政十一年十二月、六六歲―／十三　見当識の喪失と方向感覚の麻痺―「北野賀茂に詣づる記」享和二年十二月、六八歳―／十四　死霊の別れ、俗信と幻覚―「哭梅崖子」文化元年一月、七一歳―／十五　デーモンの〈翁〉との対話―「暁時雨」文化元年十月、七一歳―／十六　〈天罰七十二翁〉の強迫観念―「文反古」文化二年十二月、七二歳―／十七　幻覚体験と怪奇文芸

（三）自己処罰の要求と自己処理の衝動
　｛一　自己処罰の要求,／二　自己処理の衝動／三　身辺整理の衝動／四　懺悔告白の衝迫／五　「胆大小心録」・集合コンプレックスの過剰代償／六　虹の世界・没前の前駆症状

後記　三つの視点の内旋的深化

上田秋成研究文献（編：佐野正巳）