昭和57年　Ａ５判　P245　帯折れ跡　カバー背ヤケ、上端僅イタミ　小口からページ端にかけてヤケ、時代シミ

“日常の中の聖なるものは、身近なだけにとかく見過ごされがちである。しかし、そこには宗教の本質に関わるものが潜んでいるはずである。宗教の意味世界を社会科学的に明らかにするための手がかりとして、本書は「日常性」という視点を設定した。近・現代日本の宗教の経験的研究を軸に、歴史的、地域的比較と、日常性概念の理論的可能性を展望する論文を配した。学際的な討論にもとづく野心的論文集である。”（帯文）

目次：
まえがき

【Ｉ　聖なるものと日常性】
民衆暦と日常生活の生成（荒井芳廣）
　一　メディアとしての藤本
　二　暦本のメッセージ
　三　暦本とユートピアへの戦略
時間的聖性の創出―ユダヤ教安息日―（市川浩）
　一　序
　二　休息と聖別―ミシュナの安息日
　三　静寂が意味するもの
　四　安息日の起源と変容
　五　祖国喪失と秩序再構築
　六　結語にかえて―天地創造物語
〈イエ空間〉分析序説―方法的プログラム―（森反章夫）
　一　序
　二　〈たま〉観念とイエ空間　｛柳田民俗学の手法／「カムナガラの道」の基本概念｝
　三　イエ空間の実定性と身体の形態　｛柳田国男の「家の神」の問題構制／家屋の実質空間と記号的秩序／分析のプログラム／小括｝

【ＩＩ　日常性の危機と宗教】
神社整理と神社復祀（櫻井治男）
　一　研究の視角
　二　神社復祀の概況
　三　住民意識と県・国側の対応
　四　神社復祀の時代的背景
檀徒と寺院―Ａ寺単立化に見る寺檀の関係―（河野潤）
　一　はじめに
　二　Ａ寺をめぐる檀徒の活動　｛背景としての戦後・復興史／Ａ寺単立化過程｝
　三　檀徒と宗門
　四　檀徒と寺院
　五　むすび
既成仏教における民衆宗教運動―呑竜講形のばあい―（川添崇）
　一　はじめに
　二　呑竜講成立の背景
　三　呑竜講の組織と活動
　四　分身所
　五　呑竜講の伝承と信仰
　六　むすび

【ＩＩＩ　宗教経験と思想形成】
日蓮における宗教的象徴と鎌倉後期武家社会（笠井正弘）
　一　序
　二　日蓮をめぐる利害状況
　三　象徴と心的機制―帰属的投影を中心として―
　四　三つの中心的象徴の分析　｛曼荼羅／上行菩薩／不軽菩薩｝
　五　結び
周辺体験と思想形成―仏立開導長松清風の場合―（西山茂）
　一　はじめに
　二　在家主義への道
　三　初期仏立講の展開
　四　内棲宗教の成立
　五　むすびにかえて
新宗教信者の宗教経験―Ｋ会の事例―（白水寛子）
　一　問題の所在
　二　調査対象教団Ｋ会の概況　｛Ｋ会の沿革／Ｋ会の信念体系と実践活動｝
　三　質問紙調査にみるＫ会会員の宗教経験　｛調査の概況／回答者の概況／会員にみるコミットメントの諸相｝
　四　結び
大本教の大正期の発展について―信徒の回心状況から―（日野謙一）
　一　大正期の大本教の動向
　二　資料の性格
　三　大本信徒の入信前の諸問題　｛疎外状況／農村救済運動／近代思想・文化の受容とゆきづまり／新しい民衆宗教を求めて｝
　四　大本信徒の回心状況　｛神霊の実在やおかげを得た喜び／改心と存在意義の獲得／使命感の覚醒／大本教の思想に共鳴／カリスマの偉大さに感銘｝
　五　大正期の大本教と日本の近代化過程

【ＩＶ　生活世界と宗教的世界】
宗教言語と日常言語―日本の宗教文化理解の一視座として―（鎌田東二）
　一　はじめに
　二　原理論的問題
　三　類型論的問題
　四　新宗教の宗教言語―「言霊宇宙論」の展開　｛新宗教の発生と自己審神者化／自己審神者化から相互審神者化への道―大本教の場合／出口王仁三郎の言霊宇宙論｝
　五　むすび
聖俗世界への解釈視角―〈宗教的世界〉把握における多元論的視角の検討―
　一　多元的現実理論の宗教社会学的展開と聖俗理論
　二　科学世界、聖俗世界、生活世界

宗教社会学研究会活動報告