1981年初版 文庫判 P342 カバー僅スレ、背僅ヤケ、上端僅イタミ 小口からページ端にかけてヤケ 扉ページ折れ跡
1981年初版 文庫判 P342 カバー僅スレ、背僅ヤケ、上端僅イタミ 小口からページ端にかけてヤケ 扉ページ折れ跡
“宇宙はエントロピーの増加によって秩序から混沌へと衰弱して遂には全滅するという。ところがN・ウィーナーによれば、生命、とくに人間はそれと戦い、反エントロピーを短期間だが保持できる英雄だというのだ。
さて、ここに男が一人いる。名はシーリグ、41歳。読心術ができ、他人の心の覗き屋《ピーピング・トム》だった。早熟で、10歳の頃には父母の秘密……家計上の不安、性交の快楽と苦痛などを残らず知っていた。それは彼にとって遊びであり、信仰であり、復讐だった。排卵中の雌鳥の魂に入って尻の穴の収縮を感じたり、魚の意識に侵入したり、長じては女の魂と結合して性交中の激しい陶酔を知ってクライマックスの強烈さを高め、学生のレポートを代作して生計を立てることができた。だが、彼の能力も枯れはじめた。LSDや絶食を試してみたが、エントロピーの増加=内死を止めることは不可能だった。その悲哀と至福をクールにユーモラスに描くシルヴァーバーグの代表作。”(カバー裏紹介文)