1993年初版 四六判 P198 帯スレ、背ヤケ、上端少破れ カバーヤケ 天時代シミ
1993年初版 四六判 P198 帯スレ、背ヤケ、上端少破れ カバーヤケ 天時代シミ
“お岩の幽霊で知られる『東海道四谷怪談』が初演されたのは文政八年、幕藩制がその土台から腐りはじめ、あらゆる既成の秩序が崩れていく時代であった。鶴屋南北は、この崩壊期のエネルギーを、忠臣蔵のパロディの形をとって描き出した。悪意と哄笑、猥雑と醜悪の織りなす南北のドラマ世界から、崩壊期の精神とその可能性を読みとる。”(カバー袖紹介文)
目次:
崩壊期の精神―まえがきにかえて
精神史の地平に/崩壊期のエネルギー/かぶく精神
I 猥雑・滑稽・グロテスク
一 越境する空間 {婚礼と葬礼/グロテスクな哄笑/卒塔婆と鯰の出会い}
二 拡散的な序幕の構図 {浅草寺境内という場所/俗界と聖域/木兔のイメージ/按摩宅悦の登場}
三 悪と色好み {伊右衛門の悪/非人と悪/敵討ちと色好み}
四 地獄宿の喜劇と愁嘆 {ナンセンスな笑い/南北の遊び/愁嘆・滑稽・落差感}
五 悪の絵模様 {二つの殺し/笑う悪の笑い/猥雑をかかえ込んだ悪}
II 顔にかかれたドラマ
一 幽霊の不幸な物語 {夢の場/南瓜とお化け/幽霊とお化けの合成/不運な幽霊・檜垣/おかしな幽霊問答/善悪をこえた悪}
二 女形と悪の美 {毒婦型・悪婆型/古典的な女形/多義化する役者の肉体/桜姫と清玄の幽霊/戯画化された幽霊}
三 お岩の変身 {伊右衛門浪宅/悪の魅力/生きながらの変身/鉄漿つけ・髪梳き/赤子の鳴き声/木兔とお大とお岩}
四 被害者から加害者へ {お化け屋敷の出現/お岩と小平}
五 悪の競演 {死霊の川/敵討と連帯/戸板返し/加害的な悪の言い合い}
六 恐怖と笑いの背中合わせ {(だんまり)と魚籃の顔/形見の櫛/盥から出る手/亡霊を使った笑劇}
伊右衛門は死んだか―結びにかえて